プールいや(はじめての2語文)

次男は、言葉が出始めたのは早いほうではなかった。

言葉の出始めは次男より長男のほうがずっと早かった。

とはいえ、次男が1歳半の頃には単語はそれなりに出ていたし、ふだんの生活で次男が言葉を理解しているのがよく分かっていたので、次男の言葉についてはまったく心配していなかった。

次男は「単語が出始めてから文章になるのに時間がかかるタイプ」だったのだ。

 

プールいや

そんな次男が2語文を話し始めたのは、次男が1歳10か月の頃だったとはっきり覚えている。

その頃、近所の園でプール開放があるとのことで、次男をベビーカーに載せて園へと向かった。

「プールに行くよ」と次男に伝えたものの、園までたどり着く間、次男はしきりに「プールいや」・「プールいや」・「プールいや」と呟いていた。

次男は泣き叫びもせず、無表情で「プールいや」と呟くのだった。

次男の初めての2語文は「プールいや」だった。

「プールに入りたくない」という気持ちを伝えたい一心で「プールいや(嫌)」という2語文を話したのだ。

季節は初夏。

次男は「プール」というものをまだ経験したことがなかった。

プールがどういうものか、次男には分からなかったはずだ。

次男はきっと不安だったのだろう。

園に到着して、さっそく次男をプールに入れようとすると、次男はひたすら泣きわめき、プールに入るのを拒否した。

結局その日、次男はプールには入らずに家に帰った。

それからまもなく、まるで噴水が噴き出すように次男から言葉があふれ出し、次男は2語文・3語文…というように、どんどん話し始めた。

懐かしい初夏の思い出である。

そんなにプールを嫌がっていた次男も、今ではプール大好きになり、暖かくなって小学校に入学した頃にスイミングを習うのを楽しみにしている。