自然分娩と帝王切開
私は、長男のお産で自然分娩を、次男のお産で帝王切開をそれぞれ経験した。
自然分娩と帝王切開の両方を経験した人はたくさんいると思う。
「自然分娩と帝王切開のどっちが大変だったのか?」と人に聞かれることがある。
私の答えは
「長男のお産(自然分娩)はお産のときは痛かったけれど後味が爽快だった。」
「次男のお産(帝王切開)はお産のときは痛くなかったけど後味が悪かった」
だ。
トータルで考えると、帝王切開のお産のほうが自然分娩よりもつらいことが多かった。
けれども、実際どうなのかは人によって違うみたいだ。
私のように「自然分娩のほうが帝王切開より良かった」という人ばかりではない。
自然分娩のほうが帝王切開よりつらかったという人もいる。
お産の状況は人によって違うから当然かもしれない。
長男のお産(自然分娩)
良かったこと
安産
長男のお産は自然分娩だった。
良い助産師さんの導きがあったのでお産はスムーズに進み、会陰切開もせず、お産の傷跡も少なかった。
お産に立ち会った医師や出産後に診察した医師から「上手く産んだわね」「お産が上手だね」と言われて私はご満悦だった。
まあ要するに「安産」だったのだ。
お産の雰囲気
出産したのは総合病院だった。
分娩室は照明が薄暗く設定されていた。
そのせいで「動物みたいに穴ぐらで出産しているような雰囲気」で「昔ながらにひっそりとお産している」という雰囲気を少し味わえたのが良かった。
もちろん、お産は死ぬほど痛かった。
長男の出産は夫が立ち会った。
Sの気がある(と思う)夫は、普段見られない私が苦しんでいる姿を見てなんだか嬉しそうだったのが腹立たしかった。
お産は確かに疲れた。
けれども、終わった後は達成感と爽快感でとても心地よかった。
マラソンでゴールした後のような気持ちだ。
お腹の戻り
初産だったのでお産のあとの後陣痛もなかった。
産んだ後はすぐバネがもとに戻るようにお腹も元通りになった。
当然、お産の後は悪露が出るのでしばらくはトイレが若干大変だけれども、それ以外はわりと快適だった。
会陰切開なし
「会陰切開はできるだけしない」という希望を病院に伝えてあった。
希望通り会陰切開をせずに済んだ。
フリースタイル出産ができる病院だったので、お産の体勢をいろいろと試したうえで自分が一番しっくりときた体勢でお産をすることができた。
満足したお産だった。
残念だったこと
ただ1点、残念だったことがある。
お産ラッシュ
長男を出産した日は不幸にも、いわゆる「お産ラッシュ」の日だった。
そのせいで助産師さんの手がまったく足りていない状態だった。
長男を出産した病院はそれなりの分娩数がある総合病院だ。
お産が重なると「4人同時に分娩中。急いで仮の分娩室を準備する」こともあると、その病院の助産師さんから聞いた。
私はいきなり破水からお産が始まったので、本格的な陣痛が来るまで時間がかかった。
けれどもその間、そばに助産師さんがついてくれることはなかった。
お産が次から次へと始まるから助産師さんはそちらへの対応に追われていた。
病室にひとり取り残される
たまに助産師さんが様子を見にくるものの、すぐにどこかに行ってしまい、私は病室にひとり取り残された。
あまりにも長時間誰も来ないので、病室から一番近いナースステーションに歩いて様子を聞きに行くと「ここの部署は分娩の担当ではないから知りません」と冷たい返事をされたのが悲しかった。
部署間の仲が悪いのかもしれない。
けれども患者までそれに巻き込まれるのは迷惑である。
ある時は、分娩監視装置を取り付けに来てから1時間以上だれも見に来なかった。
「おなかの赤ちゃんは本当に大丈夫なのか?」と初産だった私はとても不安だった。
ようやく夕方になって、交代した助産師さんが出勤してきて専属で担当してもらった。
そうしたらお産が急激にすすんで出産した。
寄り添ってくれるお産が羨ましい
お産に関する記事をネットで読むと「陣痛が始まった後は助産師さんがずっと腰をさすってくれたのが嬉しかった」などと書いてある。
助産師さんがずっと付き添ってくれるお産か。
「いったいどこの国のお産の話だろうか?」と思うほど自分のお産とは状況が違う。
長男を出産した病院でも人員にゆとりがあるときは、助産師さんが妊婦の腰をさすってくれるのだろうか?
総合病院での出産は、運が悪いとお産ラッシュにぶち当たってしまい、お産が本格的に始まるまで放っておかれることを覚悟しなければならない。
そういう経験をしたので、次に出産する時は助産院で産みたいと思っていた。
助産院での出産であれば、陣痛の間、誰かが必ずそばについてくれるだろう。
けれども、残念ながら次のお産(次男のお産)は子宮筋腫のせいで病院での予定帝王切開になってしまった。
次男の出産(帝王切開)
帝王切開の感想
次男の出産は帝王切開だった。
次男の帝王切開でのお産については別の記事、出産(帝王切開)の記録に書いた通りだ。
この欄では、帝王切開を受けた感想について述べる。
帝王切開はやはり「手術」だから、なんだか自分が「物」になった感じがした。
もちろん、横に麻酔医の先生がついていてくれたのは心強かった。
けれども、工場で作業の対象になっている「製品」という感じだった。
「物」である自分が手術台に置かれて、まな板の上の鯉のごとくさばかれるみたいな感じだ。
帝王切開では、頭上に設置されたライトで自分自身が煌々と照らされている中で手術を受ける。
だから「出産」という雰囲気ではない。
でも、生まれてから今まで本格的な手術というものを受けたことがなかったので、良い経験だった。
帝王切開のつらさ
よく言われていることだが、帝王切開の場合、手術中は麻酔が効いていて痛くはない。
問題は「術後」である。
術後、麻酔が切れてくると痛くて起き上がれない。
子宮を収縮させるために、助産師さんが巡回してお腹をグリグリやりにくる。
これがまた痛い。
帝王切開の術後は子宮収縮剤や抗菌剤が点滴で投与されるので、ふだんあまり薬を飲まない私は、点滴で大量の薬剤を投与されて気分は最悪だった。
点滴されて寝ている状態なので、足が象のようにむくれる。
術後の発熱も追い打ちをかける。
まだ満足に起き上がれない状態なのに「癒着するから早く歩け」と言われた。
点滴を下げた棒にぶら下がりながら、よろよろ歩いた。
それに加えて日赤恒例の「熱血授乳指導」が深夜まで続いたので、疲れは頂点に達した。
こんなつらい思いを何度も繰り返す覚悟の上で出産に臨むのだから、帝王切開を2回以上経験している方々を私は本当に尊敬する。
「帝王切開は楽でしょ?」みたいなことを平気で言う人もいるらしい。
けれど、本当にとんでもないことだ!
帝王切開は全然「楽」じゃない。
「帝王切開で出産したから本当のお産を経験していない」と思っている方もいるみたいだ。
けれども、そんなに自らを卑下する必要はまったくない。
「帝王切開は立派なお産だ」と自分を誇りに思ってほしい。
まとめ
お産は安産であるに越したことはない。
安産ならばやっぱり自然分娩のほうがいい。
私には次のお産のチャンスはほぼないだろう。
けれども仮に次にお産ができるとしたら、どんなに痛くても、やっぱり自然分娩がいい。