保育園民営化って、いったい何だったんだろう
保育園の倒産が増えているそうだ。
原因は少子化だ。
ほんの少し前まで、待機児童が多すぎて保育園に入れなかったのが信じられない。
今や保育園の空きが増えすぎて保育園が倒産する時代である。
2010年代、待機児童が多すぎて次男の保育園入園を断念したわが家からすると「何でやねん」である。
2016年生まれのわが家の次男は、待機児童の数が一番多かった時期に保活をした。
どの親も「保育園に入れない入れない、困った困った」と嘆いていた。
待機児童問題は本当に深刻だった。
保育園が見つからなければ仕事を失うことになるからだ。
保育園に入園できる確率を上げるため、親たちは保活に精を出した。
当時、5園、10園と保育園を見学するのは普通だった。
保育園側も、次から次へ見学しにくる親を案内する業務に追われて大変そうに見えた。
それでも当時は、保育士の数が少ない・園舎が狭い・保育が手厚くない等で保育環境が劣る園ならば空きが出ることもあった。
親たちは、保育園に入れずに仕事を失うことと、良心を捨てて環境が悪い園に仕方なく我が子を入園させることの間で選択を迫られた。
子どもを守ることを選び、保育園入園を諦めた親もいた。
結果として保育園に入園できず、幼稚園に回った世帯が少なくなかった。
次男もそのひとりだった。
次男の保活をしていた時期より少し前(2010年代前半)、自治体はこぞって保育園民営化に精を出した。
その様子を私はいち保護者として見ていて思った。
「保育園民営化にかける労力があるのならば、一刻も早く保育園を増やすほうにエネルギーを回せばいいのに」と。
保育園をつぶすことにかける時間と労力があるならば、保育園を早く増やしてくれ!と思っていた。
今思うと、保育園民営化って、いったい、何だったんだろう。
認可保育所を1つ無くすためには、本当に多くのエネルギーを必要とする。
自治体職員の方々だけでなく保護者にも相当の労力が要求される。
在園児の保護者への説明・地域住民への説明・民営化後に引き継ぐ業者の選定・民営化時の保育の引継ぎ…などなど、認可保育所の民営化はおそろしく手間がかかるものだ。
自治体職員の方々は仕事としてやるからまだいい。
当時、保育園民営化に巻き込まれた保護者の方々は、お仕事をしながら民営化に関わる活動に参加を強いられて、本当に大変だったと思う。
それでも、こどもたちが生活する保育園の環境をできるだけ守ろうと、動いてくださった保護者の方々がおられたのは確かだ。
今だったら、「保育園民営化」なんて自治体のコストを下げるための話で、保護者にも在園児にも良いことはあまりないから「迷惑!やめろ!」という声が上がると思う。
保護者も手間を強いられるし、当然、保育者の変更や保育内容の変更で環境が変わってこどもたちの負担になる。
待機児童が多かった時代によく言われていたこと。
それは「コスト高の公立保育園をつぶして私立保育園を作れば、保育園の数を増やせて待機児童の数を減らせる」という論理だ。
けれども少子化で子どもの数が減り、保育園は要らなくなった。
結果として、「公立保育園をつぶして私立保育園を作って保育園の数を増やすこと」は必要なくなった。
むしろ逆に、発達に不安があるこどもたちが増えて、多様なこどもたちの保育にノウハウがある公立保育園の価値は見直されているせいなのだろうか、保育園民営化の話はあまり聞こえてこない。