広陵高校の事件に思うこと

今年の夏の甲子園で最も印象に残ったこと…それは、広陵高校の途中出場辞退だ。

言うまでもなく、広陵高校は野球強豪校として全国的に名を知られている。

 

広陵高校の野球部監督は長年、学校の実力者として君臨し、当時、広陵高校の副校長を務めていた。

野球部を何度も甲子園出場に導き、何人ものプロ野球選手を輩出した監督には、校内で誰も逆らえなかったのは容易に想像できる。

 

今回の事件も、昔ならば被害者が泣き寝入りしたケースだったのだろう。

SNSが発達した現代では、被害者の口を閉ざすことは難しくなった。

 

小さい頃から野球漬け、晴れて広陵高校のような強豪校の野球部に入学しても、出場機会が得られないまま、スタンドでの応援を余儀なくされる生徒は少なく無い。

たとえ出場機会が得られなくても、野球部員ならば、毎回の遠征に同行しなければならない。

スタメンに入れなくても、野球部員として厳しい練習は続く。

いくら練習しても出場機会がないならば、鬱屈した気持ちになるのは当たり前だ。

 

穿った見方をすれば、スタメンに入れない野球部員の存在は、野球部を支える「財布」である。

遠征のたびに交通費を保護者は支払わなければならない。

保護者は、もしスタメンに入れなければ野球部の財布になる可能性を覚悟して強豪校に入学するのである。

 

もっと穿った見方をすれば、もし他校に進学して自校のライバルになる可能性があるならば、自校の野球部員の控えにしておけば、他校が躍進するチャンスを奪うことができる。このレベルの話になると、高校野球はもはや教育ではないといえる。

 

1校の野球部に所属する野球部員の人数を制限したほうがいいと思う。

そのほうが、選手が多くの高校に分散するから、各選手の活躍の場が増えるだろう。

 

暴力沙汰を起こした生徒を責めるよりも、長年続いてきたスポーツ強豪校のやり方に問題がある。

広陵高校では、寮母を監督の妻、コーチを監督の息子が勤めていたと聞く。

野球部自体が「家族経営」であり、周りを身内で固めていたのだ。

これでは、選手の逃げ場がまったくない。

監督自身に嫌われなかったとしても、監督の妻や息子に嫌われたら、妻や息子から監督の耳に悪い噂が入り、活躍の場を失う可能性がある。

 

野球に限らずほかのスポーツでも、広陵高校のように、寮の運営を監督の身内(妻や父母)で固めるケースが散見される。

テレビ等の報道では、監督の身内が寮の運営をしていることがまるで美談のように語られているが、それは違うんじゃないかと思う。

「ザ・日本」というべき家族経営的なやり方でなければ、スポーツ強豪校は上手く回らないのだろうか。