窓が開かない保育園

窓が開かない保育園を見学したことがある。

「お試し保育」という名目でそこの保育園を見学したのだ。

 

窓が開かないのは、ビルの中にある保育園だからだ。

フロア面積は広い保育園だった。

けれども、高層オフィスビルの中に入っている保育園だったので、重厚な窓で窓がいっさい開かない仕組みだった。

園内はエアコンが常時効いていて、一年中快適な温度に保たれていた。

その引きかえとして、どの窓もいっさい開かないため、保育園にいる間は散歩の時間を除くと外の空気を感じることができないし、直射日光が部屋の中まで入ってくることがない。

 

たとえ雨が降っていても雪が降っていても、保育園の中からは臭いや湿度でそれを感じることができない。

一年中エアコンが効いているのはオフィスとしては快適な環境だ。

けれども、こどもたちにとって雨のにおいがしない園って、どうなんだろう。

 

そこの園を見学したのは夏だった。

床材が冷えるせいなのだろう、床に座っていると底冷えした。エアコンの冷たい風が床に当たって冷えるのだろう。

こどもたちの体も冷えるはずだ。

当然のごとく、園には園庭がないから、毎日散歩に出かけなければならない。

こどもたちは散歩に出かけないと、光や風を感じることはできないのだ。

 

1日1時間か2時間程度そこで過ごすくらいならば、たいした影響はないと思う。

でも、1日6時間も7時間も、そういう環境の保育園にこどもたちを置くのって、どうなんだろう、と思った。

見学した私でさえ、窓が開かず自然の風がいっさい入ってこないエアコンの効いた保育室にずっと居ると息苦しくなった。

 

夏は少し汗ばむくらいが良いし、冬は少し寒さを感じるくらいが良い。

私はやっぱり、小さいこどもたちはできるだけ、日光を直接浴びることができて、風のにおいを感じられる環境においてあげたほうがよいと思う。

ただでさえ、親と離れて保育園という場所で過ごしているんだから、環境くらいは良くしてあげたいと思うのよ。

 

ちっちゃなこどもたちをこういう人工的な環境で育てる危険さについて、もっと敏感になったほうがいい。

少し前まで、そうね、2010年くらいまでは、「保育園は日当たりが良い場所にある」ことが当然の認識だったと思う。

それが、待機児童が騒がれてから、保育園の日当たりを良くすることなんて、すっかり忘れ去られてしまった。

 

今や少子化で保育園が余っている。

倒産する保育園も増えている状況だ。

そんな環境なのだから、昔の保育園のように、こどもたちが光と風を感じられる保育園に戻してほしい。