芳香ネコのにおい
いままで何匹かのネコを飼ってきた。
ネコというのは綺麗好きで四六時中毛づくろいをしているから、
いわゆる獣臭があまりしない。
去勢していない大人の雄ネコ以外は、ネコは基本的に無臭だ。
ところが、飼っていたネコの中でとても良い匂いがするネコがいた。
芳香ネコと言った感じだろうか。
その芳香ネコは雌ネコだった。
芳香ネコは赤ちゃんネコのときから良い匂いがした。
わりと長生きしたので、
病気が原因の匂いではなかったと思う。
芳香ネコの「良い匂い」はたぶんネコ自身の体臭だろう。
たまにそういう「良い匂い」を放つネコがいるのだ。
癒される香り
芳香ネコの体に顔をうずめると、
なんともいえない良い匂いが漂ってくる。
その匂いを嗅いでいると本当に癒された。
そのネコだけが特別な匂いを放っていることは、
私だけでなく他の家族も気づいていたほど、特有の匂いだった。
その匂いを表現するのが本当に難しい。
具体的に〇〇の匂いという例えをするのが難しい匂いだった。
どちらかというと甘い匂いだけれども、
お菓子のように甘ったるい匂いではない。
タンパク質っぽい匂いだけれども、
かといって獣臭・肉の匂いとはちょっと違う。
ほんのに甘くてほんのりタンパク質っぽい、
香料が入っていないベビーパウダーのような匂いだ。
芳香ネコが亡くなってから今年で10年になる。
芳香ネコは気性は荒いけれども、
気高くて賢い雌ネコだった。
今もあのネコの匂いを思い出す。