(読書感想)タンゲくん(作・片山健)
この本のタイトルでもある「タンゲくん」は、
片目を怪我した猫だ。
詳しい説明はこの本にないけれども、
おそらく、時代劇の主人公・片目の丹下左膳がモデルだろう。
可愛いというよりも、迫力があって独特の魅力がある絵である。
タンゲくんの魅力
タンゲくんの魅力は一言でいうと、自由奔放なところ。
タンゲくんが外にいるとき何をしているのかは、
主人公の少女もよく知らない。
でも夜になると、
タンゲくんはごはんを食べに帰ってきて、
主人公の少女の上に飛び乗って丸くなって眠る。
そういう風来坊なタンゲくんでも、掃除機の音は大の苦手だ。
昔わたしが飼っていた猫の中にも、
タンゲくんと同じように、
日中は外で暮らし、
餌を食べて寝るために家に帰ってくる猫もいた。
家を自由に出入りできる状態でも、
自宅から近い場所しか行かない猫もいれば、
日中ほとんど返って来ない風来坊的な猫もいる。
今は感染症や交通事故などを防ぐため、
猫の室内飼いが推奨される時代だ。
一昔前よりも室内飼いの猫(イエネコ)が増えているといわれている。
絵本「タンゲくん」が書かれたのは、
今から30年ほど前の1992年。
まだまだ外猫が多かった時代に描かれた本なのだ。
外猫をたくさん飼っていた経験があるわたしから見ると、
タンゲくんのような風来坊な猫にとっては、
ケンカや事故、病気をもらったりなどのリスクがあるけれど、
家の内外を出入り自由なソトネコとして生きるほうが、
「ネコとして生きている」感があるように見える。
タンゲくんを読んでいて、そう思った。
タンゲくん
作・片山健
初版・1992年
出版元・福音館書店