(読書感想)日本の教育はダメじゃない-国際比較データで問いなおす(その1)日本の詰め込み教育について

日本の教育はダメじゃない-国際比較データで問いなおす

初版:2021年
著者:小松光/ジェルミー・ラブリー

この本の存在を知ったのは、週刊ダイヤモンドの記事だ。

この本の表紙には次のような記載がある。

「本書では、日本の学校教育のどこがどうダメなのか、またはどこは大丈夫なのかを、
データを使って明らかにし、日本の学校教育に対する現実的な理解を作っていきたいと思っています。」

つまり、この本には「日本の学校教育はダメである」という私たちの思い込みが正しくないことが、
データで示唆されている。

この本には、ピアックという人が2011-2016年に実施した、45歳から54歳の世代の数理的能力と読解力の点数が示されている(上述の週刊ダイヤモンドの記事にも同じグラフが掲載されている)。


出典:「45歳以上の学力は世界一」日本の詰め込み教育はむしろ海外で高く評価されている 無理に新しい教育をする必要はない

上のグラフに示されているように、おおむね1957-1971年生まれの人の数理的能力と読解力については日本は38か国中ダントツで1位なのだ。

 

この本を読んで思ったこと「共通一次試験について」

この本には言及されていなかったと思うが、上のグラフの元になった試験を2011-2016年に受けた45歳から54歳の世代は1957-1971年生まれで、2022年現在、51歳から65歳である。

1957-1971年生まれは、いわゆる「共通一次試験を受験した世代」とおおむね重複する。

共通一次試験は1979年から1989年まで実施された。

共通一次試験の試験科目は国語・数学・社会・理科・英語の5教科7科目(理科2科目・社会2科目は選択制)で合計1000点満点である。(注)1989年までの最後の3年間は国語・数学・社会・理科・英語の5教科5科目(理科1科目・社会1科目は選択制)で合計800点満点に変更された。

共通一次試験は年1回・極限状態での一発勝負の試験で「受験競争を煽る」と批判された。その一方で、共通一次試験は奇問難問が排除された標準的な内容だったのも確かだ。

共通第一次学力試験の導入-文部科学省

もちろん共通一次試験だけが、1957-1971年生まれの学力を上げた要因と断言することはできない。

けれども、共通一次試験という画一的な試験制度の存在が、この世代全体の基礎学力の向上に寄与した可能性はあると思った。