大学進学率の男女差を考察する【2023年度】
週刊東洋経済に大学進学率(2023年度)が掲載されている。
首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県など)・関西圏(京都府、大阪府、兵庫県など)を中心に都市部の大学進学率が高いことは言うまでもない。
大学進学率のトップは京都府と東京都。この2つの都道府県は数年後には大学進学率は8割に迫る勢いである。
とはいえ都道府県別の大学進学率を眺めてみると、意外な側面が見えてくる。
首位73%「大学進学率」の高い都道府県ランキングに掲載されている大学進学率の男女差を各都道府県別に並べてみた。
8割を超える都道府県で男子よりも女子の大学進学率が高い。女性の大学進学率が低いのは「昔の話」だ。
今は、男子よりも女子が大学に進学する時代である。この点で日本はすでに欧米諸国と同じ傾向だ。
意外なことに「大学進学率が低い都道府県ほど、男子よりも女子の大学進学率が高い」傾向がある。
都道府県別・大学進学率の男女差ランキング
首位73%「大学進学率」の高い都道府県ランキングを元に作成(表中、黄色で示した箇所は大学進学率「下位」10都道府県・ピンクで示した箇所は大学進学率「上位」10都道府県)
上の表中、上にランクされている都道府県ほど、女子の大学進学率が男子の大学進学率より高いことを示している。
男子に比べて女子の大学進学率が高い県は、九州地方(鹿児島県・長崎県・大分県・佐賀県)・四国地方(高知県・愛媛県・徳島県)が多い。
九州男児という言葉があるから、九州地方では大学進学率は女子より男子が高いと思いきや、九州地方には大学進学率が男子よりも女子がかなり高い県が多いのだ。これは意外だった。
大学進学率が女子より男子で低い都道府県では、男子については職人系を中心に高卒人材に高い需要があるためだと推測される。
逆に言えば、大卒人材を好む業種がこれらの県には少ないため、女子は大学卒業後に都市部で就職するために県外に出てしまうことを示唆している。
都市部では逆に、女子より男子の大学進学率が高い県が散見される(埼玉県・大阪府・神奈川県)。
むしろ「都市部は男子・女子ともに大学進学率が高い」というのが妥当だろう。都市部ではいわゆる「ホワイトカラー職」の割合が大きいからだと思われる。
地方を中心に男子進学率が低い都道府県が存在するのは、高卒でもしっかりと稼げる仕事が存在するという理由のほかに、貧困のため進学を断念して家計を支えるために働く男子生徒が少なくないのではないだろうか。
「働いて家族を守ってこそ男」という意識から高卒就職する男子生徒が少なくないのではなかろうか。
国全体で男子よりも女子の大学進学率が高い事情を鑑みると、大学進学については女性蔑視のジェンダー問題というよりも、貧困問題と仕事の需要供給のミスマッチの問題のような気がするが、どうだろうか。