若き日の三國清三シェフを映したテレビ番組のこと

2025年、三國清三シェフが黄綬褒章を受章した。

三國シェフといえば、四ツ谷にあるレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」を永く経営していたことで知られている。

三國シェフは70歳を機に「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店してしまったが、三國シェフは料理人としてこれから先も働いていくそうである。

わたしは「オテル・ドゥ・ミクニ」には一度も行く機会がなかったので、閉店はとても残念なだ。

 

最近、三國シェフの黄綬褒章を報じるニュースを見た。

久しぶりに三國シェフの映像をテレビで見た。

三國シェフ、すっかり貫禄が出て全体的に丸くなっていることに驚いた。

 

わたしが三國シェフをテレビではじめて見たのはもう40年近く前のことだ。

当時、新進気鋭の若手料理人として三國シェフがテレビ番組で取り上げられていた。

 

そのときに観た、三國シェフを特集した番組は高校生の私にとって衝撃的だった。

当時の三國シェフはまだ30代と若く、眼光鋭く、体つきもシャープだった。

確か、当時その番組で三國シェフは「子どもの頃、北海道の自然豊かな環境で採れた食材(野菜や魚など)を口にしていた経験が舌を鋭敏にした」という話をしていた。

「幼少時に感覚を磨くことが大切だ」と三國シェフは言っているのだな、と、その番組を観ていてわたしは思った。

 

また、三國シェフは、若くして一流シェフの下で修業を積んだことが良い経験になったと話していた。

「鉄は熱いうちに打て」ということだ。

 

そのテレビ番組では若き三國シェフがお店で働く様子が映し出されていた。

たとえば、

・温かいものを提供するお皿は、あらかじめ温めておく。

・食材によっては煮込みすぎない・沸騰させ過ぎないことが大切。沸騰する前を見計らって火を止める。

ことを三國シェフが若い料理人たちに指示し、きちんとできていなければ三國シェフからは容赦なく怒号が飛んだ。

このご時世では「パワハラ」だとされてネットで炎上しそうな様子がテレビで放映されていた。

 

ただ、三國シェフが料理に関して細部まで気を遣っていることがテレビ番組を観ていて伝わってきた。

三國シェフを庇ってパワハラを容認するわけではないけれども、40年以上前、厨房という場所は確かにそういう感じだった。

 

若き三國シェフが放映されていた当時、わたし自身も街の飲食店でアルバイトをしていた。

女性には優しいが、厨房内では料理長からは男性スタッフに向かって怒号が頻繁に飛んでいた。

若いスタッフが何か失敗すると料理長が「〇ね!」と怒鳴っているのがよく聞こえてきた。

高級料理店からファストフード店に至るまで、昔の厨房は多かれ少なかれそんな感じだったと思う。

 

「パワハラ」という言葉が世の中に浸透した結果、今では厨房に居る人々も昔よりもずっと穏やかになったのだろうか。

 

「叱られるうちが花」という言葉がある。

若き三國シェフの姿を思い出して、最近は社会が若い人に優しすぎることで、逆に、若い人の成長を止めているんじゃないか、という気もする。

とはいえ、理不尽に怒鳴られ続けるのも、たまったものではない。

優しさと厳しさを同時に若い人に体感してもらうのは難しい。