迷惑な武勇伝
わたしは長男出産時は育児休業をとらず、産休期間の約2か月が終わった後すぐに仕事に復帰した。
強要されて嫌々仕事に復帰したわけではない。
当時は仕事に燃えていた。
仕事に穴を空けたくなかったので自ら仕事復帰を志願した。
まだ赤ちゃんの長男に負担がかからないよう、仕事復帰してからしばらくは在宅で仕事していた。
当時勤めていた会社でわたしは久しぶりの産休取得者だった。
つまりその会社では子どもを産む女性は久しぶりだった。
その後は少しずつ産休取得者が増えて、今では産休をとる人はちっとも珍しくはなくなった。
迷惑な武勇伝
ただ、私が育児休業をとらずに仕事復帰したことを経営者が武勇伝のように周りに吹聴するのがすごく迷惑だった。
まるで他の女子社員に「育休など使うな」・「早々に仕事に復帰しろ」と強要しているかのようだった。
周りにサポートしてくれる家庭がいるかどうか・本人の体力・本人の業務内容・こどもの健康状態などの事情は社員ひとりひとり違う。
だから、すべての人が早期に育休を切り上げて仕事に復帰することを強要してほしくない。
昔勤めていた職場では、女子社員が育休を切り上げて早々に職場復帰することを武勇伝のように語る経営者がいた。
今でも男尊女卑傾向が強い職場ではそういう風潮が残っているのだろう。
武勇伝の具体例
たとえば
・育休をとらずに仕事に復帰する/育休を早期に切り上げて仕事に復帰する
・時短を使わない
・小さな子どもを育てながら遠方(外国含む)への出張を厭わない
・赤ちゃんを保育園に入れたら肺炎になって長期入院する羽目になった
・こどもの体調が悪くて平日休んだ分、土日に出社して仕事をする
…という社員が過去に居たことを引き合いに出して「子育てを犠牲にして、一生懸命仕事をしている社員を見習え」と武勇伝を語る経営者・上司がいた。
こんな武勇伝を吹聴して他の女子社員の育休取得を妨げてほしくない。
女性の育休取得が当たり前になってきた今でも、まだまだこういう会社・職場はあると思う。
これを読んで「いまどきこんな会社があるなんて信じられない」と思った方は、ラッキーな会社に勤めている幸せ者だ。
橋本聖子氏
そういえば昔、国会議員の橋本聖子氏が出産後、早期に仕事復帰したら「橋本聖子さんを見習って早々に仕事復帰すべきだ」と職場の上司から言われて困っているという、産後間もない女性の話が新聞か雑誌に載っていたことを思い出した。
当時国会議員は産休・育休という制度がなかった。
だから橋本聖子氏は産後すぐに仕事復帰したと記憶している。
参議院議員・橋本聖子の出産時、議員規則には「産休」の項目がなかった
国会議員が出産するという前例がなかったのだから、橋本聖子氏はいろいろとご苦労があっただろう。
それに、橋本聖子氏が出産後に仕事復帰するにあたり色々と経験されたことが、以後の国会議員で産休を取得する人の先駆け的な役割を果たしたのは確かだ。
ただ、国会議員という重い立場と引き換えにそれなりに高給が約束されているのだから、一般人とは違ってベビーシッターを雇うことは難しくない。
その点が一般人とは大きく異なる。
橋本聖子氏の行動を批判するつもりは毛頭ない。
当時国会議員は産休・育休制度がなかったから「国会議員を休むならば辞めろ」という心無い非難を浴びたらしいし、早期復帰は橋本氏にとっては当時取り得る最善の策だったと思う。
つまり、公僕で責任ある立場であり、それ相当の高給をもらえる国会議員と、法の保護の下、産休育休をとることができる労働者を混合するのはまったくおかしいということだけだ。
それに、すべての女性がオリンピックアスリートである橋本聖子氏のように産後すぐに復帰できる強靭な体力は持ち合わせているわけではない。
ごく一部の人が取った行動を武勇伝として語ってほしくない。
ただそれだけだ。