(読書感想)日本の教育はダメじゃない-国際比較データで問いなおす(その2)アメリカとの比較と理科教育について
日本の教育はダメじゃない-国際比較データで問いなおす
初版:2021年
著者:小松光/ジェルミー・ラブリー
前回、(読書感想)日本の教育はダメじゃない-国際比較データで問いなおす(その1)日本の詰め込み教育についてを取り上げた。
今回は、この本に書かれているアメリカとの比較と理科教育について取り上げる。
アメリカとの比較
この本で著者は『今も昔も日本には「欧米に追い付け。欧米の真似をしろ」という意識が強い』と述べている。
教育についても、日本は未だ、アメリカの教育制度を日本の教育制度に取り入れようとする考えが依然としてある。
けれども、日本は平均寿命・乳児死亡率・精神疾患・薬物依存・アルコール依存・犯罪率についてアメリカよりもずっと良い状態にある。特にアメリカの薬物依存は深刻で、薬物濫用による死者は年間7万人にのぼる。
これに対して日本は乳児死亡率の低さ・殺人発生率の低さではいまだ世界トップである。
問題山積のアメリカの教育制度をあえて真似る必要はあるのだろうかと著者は問う。
その通りだと思った。
アメリカの社会情勢の深刻さを鑑みれば、アメリカは教育制度を創意工夫してなんとか頑張っているともいえる。
理科の学力の高さについて
そしてもう一つ。
この本で著者は、日本のこどもたちは小学4年生時点ですでに理科の学力が高いという調査結果について取り上げている。
日本で小学校4年生時点で塾で理科を習っている子どもの割合は12%と低い値だそうだ。
このことから、日本のこどもたちの理科の学力の高さは塾通いの成果ではなく、学校教育の成果だと著者は推察している。
わたしも著者の意見に同意する。
なお、私見だが、小学校での理科教育だけでなく、小学校入学前の幼児教育の段階から自然に親しむ活動を積極的に取り入れていることが、日本のこどもたちの理科の高学力に繋がっているのではないかと思う。