若けりゃいいってもんじゃない仕事もある
日本企業はいまだに「できるだけ若い人を採用して自分の色に染めあげる」のが好きだ。
大企業でも零細企業でも役所でも同じだ。
日本企業では非正規雇用が増えたとはいえ終身雇用制が完全に崩れているとはいえない。
雇用の際に年齢を重視する日本は、履歴書に年齢欄がないアメリカとは対照的である。
アメリカの履歴書に「年齢欄がない」納得の理由 なぜ「中年は若者に劣る」と断言できないのか | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン
学生と話していてよく思うのは「若い=優れている」と考えて、おじさんおばさんたちに対して根拠のない優越感を抱いていることです。言われてみれば、なんとなく、社会全体…
企業に限らず、日本社会全体がそういう傾向を引きずっていると思う。
「若い人は柔軟性がある」という理由で、いまだに「若い人に言うことをきかせて、言うとおりに働かせる」のが好きなのが日本社会である。
若けりゃいいってもんじゃない仕事もある
ところが、どんな職種でも若い人のほうが適しているかというと、そうとも言えないようだ。
若い人よりも年配者のほうが向いている業種のひとつが「ケアマネージャー」だと思う。
私の周囲の高齢者からは、若い人(特に若い男性)の担当ケアマネージャーは評価が低い。
ケアマネージャーが若くても女性ならば、不満はあまり出ない。
若い男性のケアマネージャーはとにかく、どうしょうもないほど「気が利かない」と私の周囲の高齢者たちは言う。
高齢者いわく、若い男性のケアマネージャーは、高齢者の立場にたって物事をみることができないらしく、トンチンカンなことをしたり言ったりする、らしい。
介護の現場で働く若い男性も「人の役に立ちたい」と思って介護の世界に飛び込んでくるような志がある人に違いない。そうであっても高齢者にとっては「役不足」なのだろうか。
「他人の立場にたって物事を見ない」のは「向こう見ず」な若さの特権である。
けれども、ケアされる高齢者の人たちからすると「気が利かない」のは致命的だ。
考えてみれば、若い男性からすれば、体が言うことを効かなくなっている高齢者の気持ちなど実感できないのは当たり前なのかもしれない。
対照的に、年配の女性ケアマネージャーは人生経験を積んでおり、高齢者の立場にたって物事を見てくれるので、私の周囲の高齢者からは概ね、評価が高い。
年齢を重ねたからこそできる仕事というのもあるのだ。
一般常識というものは、家族の誕生・身内の死別・結婚・離婚などの家庭生活を通して身についていくものだから、社会経験が少ない若い男性がズレているのは致し方ない。
まして今は核家族化していて家族や男性は家庭内でお手伝い等の家族の一員としての役割分担すら任されていないことも多いから、若い男性は社会経験が少なく一般常識さえ身につかず、ズレてしまうのは必然的だ。
「気が利かない」とされる若い男性ケアマネージャーも、経験をたくさん積んで一人前のケアマネージャーになっていくのか、それとも、一人前になる前に介護という業界から去っていくのか、どちらなのかは知らないが。