「湯灌の儀」に参列した感想

以前、親族が亡くなったとき、葬式の前に湯灌(湯かん)の儀に参列する機会があった。

湯灌の儀というのは「葬式の前に、お清めのために故人の身体を拭いたり洗ったりする儀式」のことだ。

今までいくつもの葬式に参列してきたけれど、湯灌の儀に参列したのは今回が初めてだ。

湯灌の儀を執り行ったのは夫側の親族の葬儀だったので、私自身は葬儀の内容を決める立場になかった。

当初は「お棺に遺体を納める儀式を行う」とだけ聞いていた。

実際に参列してみたら、いきなり湯灌の儀が始まり、遺体を水で洗い清めたのでびっくり仰天だった。

 

湯灌の儀とは

湯灌の儀は、故人の身体を清めるために行われる。

湯灌の儀の詳細については、以下のサイトに詳しい。

湯灌(ゆかん)とは? 行程、業者に依頼するときの注意点など [通夜・葬式・火葬の手順] All About

湯灌(ゆかん)とは、亡くなった方をお風呂に入れる儀式のこと。ご遺体を清潔して整えるために行われてきたのですが、そのほかに生まれたとき産湯に浸かったように、来世…

湯灌の儀といっても、故人の身体を拭いて洗浄する簡易的なものと、浴槽を持ち込んでお湯で故人の身体を洗う本格的なものがある。

私が参加したのは、葬儀会場に浴槽を持ち込んで故人の身体を洗う本格的なタイプの湯灌の儀だった。

浴槽を持ち込んで行う本格的な湯灌の儀は10万円前後が相場だそうだ。

それなりのお値段である。

 

湯灌の儀当日

私が参列した湯灌の儀は、葬式の前日に行われた。

遺体が安置されている斎場に移動式の浴槽が持ち込まれて湯灌の儀が行われた。

湯灌の儀で使用された移動式の浴槽は、担架に浴槽が取り付けられた形をしていた(以下のサイト参照)。

「湯灌の儀専用の浴槽」があるようだ。

湯灌の儀専用の浴槽には水道取入口がついていて、シャワーで水(お湯?)が出るようになっていた。

介護用の移動式浴槽(自宅に持ち込んで入浴するための浴槽)を製造している会社が、湯灌の儀専用の浴槽を製造・販売しているのだ。

葬儀会場の水道を使っているのか?

洗浄により出た排水はどこで廃棄するのか?

そんなことを考えながら湯灌の儀に参列していた。

 

湯灌の儀の流れ

1.顔・手・足以外の部分に布がかけられた状態で遺体が浴槽に移され、湯灌師がシャワーで遺体を洗った。

生きている人と同じように湯灌師が遺体の頭髪をシャンプーしていたのが強く記憶に残っている。

布に隠れた部分については、湯灌師が布に隠れた状態で遺体を洗う。

このとき、足か手を洗うように葬儀会社の人に促されて、参列者が遺体の足と手を洗った。

 

2.遺体を洗うのが終わると次は、遺体のひげそりと化粧である。

湯灌師が電動ひげ取り機を取り出し、遺体の髭を剃った。

その後、顔色をよくするため、湯灌師が遺体の顔に化粧を施した。

 

3.最後に、遺体に着物を着せてからお棺に移す。お棺には参列者が持参した物(思い出の品など)が納められた。

 

湯灌の儀の感想

湯灌の儀に参列してみての正直な感想は

「自分の葬儀のときは、湯灌の儀をやってもらいたくないなあ」

である。

遺体の大半が隠された状態とはいえ、自分の遺体が洗われるのをわざわざ参列者に見てもらいたくはない。

母も私と同じ意見だ。

私と同じく「参列者の前で自分の遺体が洗われるのが嫌だ」と母は言う。

元気なうちに意思を確認しておいた方が良いと思い「葬式のときに湯灌の儀をやってほしいか」を母に確認したところ、母親から「湯灌の儀はやらないでほしい」と頼まれた。

私が今回参加した湯灌の儀は果たして、故人が湯灌の儀をやりたいと希望したものなのだろうか?

一言付け加えておくが、今回担当した湯灌師は丁寧に遺体を扱っていたので、湯灌師について不満は何もない。

私の周りの人に聞いてみると、湯灌の儀に参加したことがある人は誰もいなかったし、母や叔母も湯灌の儀に参加したことはないらしい。

いったいどれくらいの割合の人が湯灌の儀を執り行うのだろうか。

以前どこかのサイトで「最近は葬儀の半数近くが湯灌の儀を行う」という記事を見かけたが、個人的には、それほどは湯灌の儀は執り行われていない、という印象がある。

故人が「やらないでくれ」と生前語っていたのならば、故人の意に反してまで湯灌の儀をやる必要がないように思えるのだが。