「こども誰でも通園制度」に思うこと
ほんの5年前は「待機児童」で大騒ぎだったのに、今は「保育所の定員割れ」が問題になっている。
待機児童の話はどこかに消え去ってしまった。
5年経って保育園にまつわる状況は大きく変わった。
今度は、認可保育所の空きを活用するため「こども誰でも通園制度」というモデル事業が2023年度から始まった。
「こども誰でも通園制度」では親の就労を要件とせず、6か月から2歳までのこどもを預かる(預かり時間は月10時間まで、2024年(予定))。
就労問わず保育所など利用 こども誰でも通園制度とは 対象や条件 議論のポイントは
預かり時間が月10時間までというと、1週間あたりの預かり時間は2.5時間ということだ。
この預かり時間では一時保育と変わらない。
月10時間の預かり時間ではこどもは園の環境になかなか慣れずつらい思いをし続けるだろうし、環境に慣れずに泣く子を保育する園側の負担は大きい。
ましてや、「こども誰でも通園制度」では保育士の加算がつかない。
「こども誰でも通園制度」では現場(園)の負担だけが増す、ということらしい。
都市部と地方では状況が異なる
都市部と地方では保育園の状況が大きく異なる。
「待機児童」のときもそうだった。
待機児童が大きく報道されたとき、地方では待機児童は発生していない地域も多かった。
待機児童が問題になっていたのは都市部だけなのだ。
今回の「認可保育所の空きを活用する」事業を活用できるのは、大幅な定員割れが生じている地方の保育所だと思う。都市部の保育所では0~2歳児の空きはそんなに多くないから。
「こども誰でも通園制度」は都市部では現実的ではない。
都市部と地方を一緒くたにするのは限界
実際、我が家とその周辺の自治体では、認可保育所の0~2歳児クラスの空きはポツポツ出ているけれども、そんなにたくさん空いていない。
そして…認可保育所は働く母親だけが利用するものではない。
例えば、保護者が急病になった場合・未就園児を育てている妊娠中の母親が切迫流産等で長期入院を余儀なくされた場合、「保育に欠ける」と認定されて認可保育所にこどもを預ける場合だ。切迫流産で長期入院する母親は珍しくない。
本来、認可保育所の空きはこういう「困った人」を救うためにとっておかなければならない。
そして現状、都市部の認可保育所は「困った人を救済できる」程度の空きしか出ていないのだ。
たとえば都市部の中学受験熱に代表されるように、教育環境について都市部と地方を一緒くたにして考えるのはもはや限界にきている。地域の実情に合わせて子育て制度を選択し利用できるようにしたほうがいい。