乳児用液体ミルクについての雑感
乳児用の液体ミルク、日本で販売開始
日本では最近(2019年)、乳児用液体ミルクが市販されるようになった。
熊本での震災以降、災害時の非常用備蓄として乳児用液体ミルクの必要性が叫ばれてきた。
震災などの災害時は、粉ミルクを調製するためのきれいなお湯が入手しにくいことが多々ある。それに、災害によるストレスで十分な量の母乳が出なくなる母親も多いと思う。
そんなとき、液体ミルクであれば衛生的だし、必要な時に必要な分だけすぐに使用できる。
災害時に赤ちゃんの命を守るために、災害時の非常用備蓄として乳児用液体ミルクは必要だと私も思う。
国内メーカーの対応
今まで国内メーカーは乳児用液体ミルクを生産してこなかった。
しかし、最近、乳児用液体ミルクの国内生産を求める声があがり、国内メーカーは乳児用液体ミルクの開発を急ぎ、今回、乳児用液体ミルクの日本国内での販売が始まった。
乳児用液体ミルクのパッケージ表示
液体ミルク
ところが、この乳児用液体ミルクのパッケージに書かれている「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」との表示が「母親を追い詰める」・「違和感がある」とネット上で話題になっている。
この「母乳が最良」という表示は、WHO(世界保健機関)などが運営する食品の国際規格によって表示することが義務付けられているらしい。
粉ミルク
ところで、「母乳が最良」との表示があるのは乳児用液体ミルクだけではない。
乳児用の粉ミルク(我が家もお世話になった)の缶には以前から「母乳が最良」だと書かれている。
うちに置いてある粉ミルクの空き缶をさっき確認してみた。確かに、粉ミルクの缶に「母乳が最良」との表示がある。
でも、粉ミルクの缶は大きいから、粉ミルクの缶の表面に「母乳が最良」という表示があっても、あまり目立たないのだ。
一方で、乳児用液体ミルクのパッケージは粉ミルク缶よりずっと小さいから、「母乳が最良」という表示がすごく目立つ。
2019年4月現在、市販されている乳児用液体ミルクの中には「母乳が最良」という表示がどーん!と中央に書いてある製品(アイクレオ)がある。この製品のパッケージでは「母乳が最良」という表示がすごく目立つ。
乳児用液体ミルクは少量ずつ小分けされて市販されているから、乳児用液体ミルクを使うたびに毎回毎回「母乳が最良」 の文字を目にするのは確かに鬱だろう。
産後しばらくは、ホルモンバランスの変動により母親の精神状態は安定しない。
それに、体調が悪かったり服薬していたりで母乳をあげたくてもあげられない人もいるのだから、「母乳が最良」との表示は、パッケージのもう少し控えめな場所に移動したほうがいいと思うが、どうだろうか。
乳児用液体ミルク:育児を楽にする目的が最優先?
国が掲げる乳児用液体ミルクの利点
ところで、内閣府男女共同参画局のウェブサイトをみると、乳児用液体ミルクの利点として以下の4点が挙げられている。
1.夜間や共働き世帯で時間が限られているとき、保育者の体調がすぐれないとき、さらには母親が不在のときなどでも、簡便かつ安全に授乳を行うことができる。
2.調乳用のお湯(70℃以上)が不要であり授乳に必要な所持品が少なくなることや、調乳を行わずに済むことから、簡便に授乳を行うことができる。
3.地震等によりライフラインが断絶した場合でも、水、燃料等を使わずに授乳することができるため、国内の流通体制が整い、使用方法やリスクに関して十分に理解されることを前提として、災害時の備えとしても活用が可能である。
4.乳児を伴って来日する外国人の利便にも寄与する。
上記1~4の記載では、乳児用液体ミルクの「災害時の備蓄」という利点は3番目であり、乳児用液体ミルクの利点として上位に挙げられているのは、上記1と2の「簡便に授乳を行うことができる」ことだ。
当初は「非常用備蓄」としての乳児用液体ミルクの必要性が叫ばれていたにも関わらず、最終的には「簡便に授乳を行うことができる=利便性を高める」ことが、乳児用液体ミルク の最大の利点になっている。
引用したウェブサイトが「内閣府男女共同参画局」であるせいかもしれないけれど。
最近は、育児の利便性を高めることばかり強調されているのが気になる。「手をかけない育児」、「共働き世帯の負担を少なくする育児」ばかりである。
効率が良い育児の奨励
どうやら、国を挙げて「効率が良い育児」を奨励している。
もちろん、乳児用液体ミルクが携帯用として利便性が高いことや、体調が悪い人や服薬している人や持病で授乳できない人の授乳負担を少なくできるという大きなメリットがあることには異論はない。
ただ、国を挙げての「効率よく育児をしろ」キャンペーンが、要は「育児にかまけている時間を減らして、浮いた時間を仕事に回せ」という国からの圧力だと思うと、おとなしく乳児用液体ミルクを使う気にはなれない私である。