アメリカでのDNA検査流行について思うこと(その2)
先日アメリカでDNA検査が流行しているという記事を書いた。
私たち日本人の多くはアメリカの歴史を詳しく知らない。
かつてアメリカで「奴隷制度」があったことは多くの日本人が知っている。
ただ奴隷制度といっても「奴隷制度下で黒人はひどい差別を受けた」という程度しか知らない日本人がほとんどだ。
私もそうだった。
オリンピックの陸上競技やNBAを見ていると、アメリカの陸上選手やバスケットボール選手には、肌が白い黒人と肌が黒い黒人がいる。
私はそれを見て、同じ黒人でも出身地域によって肌の色が異なるのだと勝手に思っていた。
けれども、そうではないらしい。
DNA検査で黒人の血が混じった白人、白人の血が混じった黒人がアメリカにたくさんいるのはなぜなのか、ある奴隷少女に起こった出来事(ハリエット・アン・ジェイコブス著)という本を読んではじめて分かった。
奴隷制度の影響
ある奴隷少女に起こった出来事を読んで初めて知ったこと。
それは、奴隷制度が存在していた頃のアメリカでは、白人の牧場主(黒人奴隷の所有者)が自分の家畜(黒人奴隷)を増やすために、黒人奴隷女性との間に子どもを作っていたということだ。
つまり、白人の牧場主は儲けを増やす=家畜(黒人)を増やすために、黒人奴隷女性との間に子どもを作って奴隷として売買していたのだ。
奴隷制度が存在していた頃のアメリカでは、1滴でも黒人の血が混じっている子どもは黒人奴隷として扱われ、売買されていたそうだ。
自分の血を分けた子どもであっても、奴隷との間の子であれば奴隷(商品)として取引され、新たな白人へと商品として売られる。
中には奴隷に対してわりと温情がある白人もいたそうだが、多くの白人はそうではなかった。
白人の血が混じっている黒人、黒人の血が混じっている白人がいるのは、この奴隷制度の名残のせいでもある。
養子制度の闇
アメリカで養子縁組が普及しているのは、奴隷制度のもとで奴隷が簡単に売買されていた過去が影響しているのではないだろうか。
もちろん養子に出された先で良い養親に恵まれて幸せな生活を送っている子どもたちはたくさんいる。
しかしその一方で、いくつかの養親をたらいまわしにされ、ひどい場合は虐待を受ける養子もたくさんいるのがアメリカの現実である。
最近、日本でも養子縁組を普及させようという取組が始まっている。
けれども、養子縁組を日本で普及させるのならば、養子縁組が根付いている国での養子縁組の歴史や経緯・現状をもっと知る必要があると思う。
養子縁組により養親の元で幸せに暮らせる子どもが増えることは嬉しいことだ。
けれども、そういう幸せな子どもたちよりも、養子縁組でつらい思いをする子どもが増えるのであれば、養子縁組を増やす意味はないと思う。
ネイティブインディアンの血の言い伝えの哀しさ
アメリカ在住の作者きろはん氏のブログ「きろはんの随想」によると、アメリカのアフリカ系アメリカ人家庭では、祖先にネイティブインディアンがいるとの言い伝えがあるそうだ。
アフリカ系アメリカ人家庭でたまに鼻筋が通って頬骨が高い子どもが生まれることがある。
その理由として、祖先にネイティブインディアンがいると先祖から言い伝えられているアフリカ系アメリカ人家庭が多いそうだ。
けれども、現実にはDNA検査の結果、祖先はネイティブインディアンではなくヨーロッパ系の血が混じっていることが判明する。
つまり、ヨーロッパ人の血を引く祖先は奴隷の所有者である確率が高い。
自分たちの誇りを失わないためにも、アフリカ系アメリカ人家庭で祖先にネイティブインディアンがいると言い伝えられているのはなんと哀しいことだろうか。
奴隷制度と養子制度
奴隷制度と養子制度は「アメリカの闇」のように私には思える。
ただ、その一方で、薬物中毒の母親から生まれた赤ちゃんや障害をもった赤ちゃんを自ら選んで養子として迎える、志が高いアメリカ人もたくさんいる。
養子制度になじみがない日本人にとって、アメリカ人にとって養子制度はどういう位置づけなのかが正直なところ実感できない。
アメリカなどの諸外国をまねて日本で養子縁組を普及させる前に、諸外国で養子縁組が広まっていった経緯や養子縁組の現状をきちんと知る必要があると思う。