就職氷河期とバブルの頃

就職氷河期

ところで、私は就職氷河期世代だ。

具体的に言うと、バブル世代が終わって、就職氷河期世代が始まった頃の世代だ。

私の世代は、学生時代にバブルで浮かれる人たちを見ていたのに、学生時代の途中にバブルが弾けてしまって就職口が激減し(バブルが弾けたのが1991年)、就職が厳しかった世代である。

何歳か上の世代はバブル真っ最中に就職したから、彼らの就職活動時は超売り手市場で引く手あまただった。

バブルの頃の就職説明会は学生にたくさん出席してもらいたくて、企業説明会に出席しただけでテレホンカード(懐かしい)を学生に配った企業もたくさんあった。

換金性があるテレホンカード欲しさに何社もの企業説明会に出席する学生もたくさんいた。

そんな上の世代のイケイケの就職活動の様子を見ていたのに、いざ自分が就職しようとなったら、バブルが弾けたせいで就職口が激減してしまい、大変厳しい就職活動を強いられた。

 

バブル期を思い出す

株の話

バブル期にオイシイ思いをしたのは学生だけではない。

いや、むしろ学生ではなく、社会人のほうがオイシイ思いをしていたと思う。

バブルの前までは「日本人は勤勉でコツコツ働き、株式投資には興味がない」のが普通だった。

ところが、バブル期になったとたん、大人たちはこぞって株の話をしていた。

幸か不幸か、バブル期当時、実家は貧しかったので株式投資には縁がなかった。

けれども、バイト先で出会う客や従業員などは、株の話でもちきりだった。

「この国では今まで、株をやる人など一部の人だけだったのに、どうして急に周りの大人たちは株だ株だと騒いでいるのだろう」と私は思っていた。

後年、日本に長く住んでいる米国人と話したときに、バブル期当時を振り返って私と同じように思っていたという話をその米国人から聞いた。

「それまで日本人は株など興味がない人ばかりだったのに、バブル期になったら日本人が急に株だ株だと言い出したのが不思議だった」と。

けれども、バブルが弾けた後は御承知の通り株価も暴落し、株だ株だと騒ぐ人はほとんどいなくなった。

 

ふつうのおばさんが海外旅行に行った時代

そういえば、バブル期の前後10年間ほどの間、ふつうのおばさんが海外旅行に行くのが当たり前の時代があった。

だいたい1985~2000年くらいの間だろうか。

今の20代30代の人たちは知らないことも多いだろう。

彼らの祖父祖母にあたる世代は割と誰でもふつうに海外旅行に行っていたのだ。

当時は農協のおじさんおばさんたちが団体でヨーロッパ旅行に行くのが流行っていた。

今の70代80代は海外旅行経験者が思いのほか多い。

日本人が団体旅行ツアーで世界各国に行き、田舎のおじさんおばさんが海外で集団ではしゃいでみっともないと言われていた時代だ。

最近、日本を旅行で訪れた外国人ツアー客が観光地で騒いでいるのと同じだ。

バブル期以前は、海外旅行をするのは一部のセレブな人だけだった。

ごく一部の貧乏学生が貧乏海外旅行をするというのはあったかもしれないけれど。

それが今は、給与は上がらないし税金は高くなるしで、近場のアジア諸国を除いて、海外旅行など気軽に行けない時代になってしまった。

つまりは、日本が貧しくなっているということだ。

55歳定年と専業主婦でも書いたが、その当時は定年55~60歳が標準だった。

だから55~60歳で定年を迎えたのちに海外旅行を楽しむ人たちが多かった。

当時は海外旅行だけでなく、定年後にゴルフにテニスにと精を出す高齢者はたくさんいた。

それが、今の60代は働いている人が主流だということを考えると隔世の感がある。

我々の世代は75歳、いや80歳を過ぎても体の続く限りは働くことになるのだろう。

 


アリとキリギリス

学生時代がバブル期と重なっていたせいで、バブル期に遊んでいるキリギリスたちを私たちの世代はたくさん見てきた。

今の80代・90代は戦後の混乱期をがんばって生き抜いてきた人たちだ。

だから、支えてあげたいという気持ちになる。

けれども、バブル期に株だ海外旅行だゴルフだテニスだと騒いでいたキリギリスたちが後期高齢者になったからといって、キリギリスたちを支えてあげたいと気持ちがどうしても起こらないのだ。