政府は児童手当の減額を検討中
政府は、一定の所得を超える世帯の児童手当の減額または廃止を検討中とのこと。
上記サイトによれば、現段階では「児童手当の減額・廃止の対象となる所得の額」や「減額する額」については正式に決定していないようだ。
ただ、一案として、高所得世帯向けの「特例給付」を2021年度から現行の5,000円から2,500円に減らすことが示されたようだ。
少し前の報道では「高所得世帯向けの特例給付を止める」案が提示されていた。
しかし、そうするとあまりにも批判が大きくなることを懸念したのか、高所得者向けの特例給付の「廃止」ではなく「減額」にトーンダウンしたようである。
ただ、この話、「現状、高所得世帯でないから我が家は減額対象ではない」と思わないほうがよい。
なぜなら、政府は児童手当の高所得世帯の判断基準を変える予定で、その結果、高所得世帯と判定される人が増えるからだ。
高所得世帯の判定基準の変更
児童手当の給付判定は今まで「所得が多い人の所得」を基準にしていた。
それが、今回の政府案では児童手当の給付判定は「世帯合算」に変更になる。
つまり、夫婦共働きの場合「夫婦の所得の合算」が基準になる。
たとえば、
ケース1
夫の所得 700万円
妻の所得 200万円
ケース2
夫の所得 350万円
妻の所得 400万円
※いずれの場合も「収入」でなく「所得」で判定する点に注意
ケース1やケース2の場合、今までは児童手当の高所得世帯には該当しない。
ケース1では所得が高いほう(夫の所得)700万円を基準に判定され、ケース2では所得が高いほう(妻の所得)520万円を基準に判定される。
ケース1・2いずれも高所得世帯の判定基準額736万円を下回るから、高所得世帯とは判定されない。
ところが、今回の政府案ではケース1・ケース2ともに高所得者世帯となる可能性がある(ただし、現行と同様「所得736万円以上を高所得世帯と判定する」場合)。
幼保無償化によるメリットが相殺される
前政権による政策の目玉のひとつであった「幼保無償化」。
それが、政権が変わったとたんに、児童手当を削減する策に打って出るとはいかがなものか。
確かに高所得世帯にとっては月5,000円が月2,500円に減額されても痛手はないかもしれない。
けれども、いったん削減されたら、この次にまた「減額」か「廃止」、その次は「減額対象者を増やす」ことになるだろう。
これでは幼保無償化によるメリットが相殺されるだろう。
幼保無償化なんて昨年(2019年)10月に始まったばかりだ。
児童手当をなくすなんて、幼保無償化が開始してからまだ1年しか経っていないのに、幼保無償化を「実質的に廃止」するようなものだ。
政府によると、児童手当の削減は「待機児童の解消」に充てるそうである。
けれども、そもそも待機児童は都市部に限った問題で、地方にはあまり関係ない話だ。
それに実は都市部でも待機児童はだいぶ減ってきている。
都市部でも認可保育所を作り過ぎて定員が埋まらない地域も出始めている。
しかも、今後は子どもの数がどんどん減っているから、たとえ都市部であっても待機児童がこれ以上増える可能性は低いだろう。
「待機児童の解消」といえば何をやっても許される風潮はいかがなものか。
実際、幼保無償化といって子育て支援をしているふりをして、実際は若い子育て世代が蔑ろにされているのだ。