就学前教育でICTは必要なのか
最近、ある幼稚園でのICT教育の様子をウェブサイト上で観た。
「野菜の生育の様子を子どもたちが教室の大型ディスプレイで観てから話し合う」といった内容が紹介されていた。
2020年に学習指導要領が改訂された。
新しい学習指導要領には小中高でICT(情報通信技術)の活用を推進することが掲げられている。
学校教育でのICT教育の活用の例として、教室の大型ディスプレイに映し出された動画を観てこどもたちで討論する様子が新しい学習指導要領に示されている。
そこの幼稚園でのICT教育は新しい学習指導要領を反映したものだろう。
就学前教育でICT教育は必要なのか
とはいえ、果たして幼稚園や保育園でICT教育は必要なのだろうか?
たとえば、実際に行くことが難しい外国での人々の暮らしを知るのに動画を観るのは有効な方法だ。
だからICT教育自体は否定しない。
けれども、実際に手を動かしてできることまでICT教育を活用するのはむしろ弊害のほうが大きいと思う。
野菜の栽培の様子を動画を観るよりも、畑で実際に野菜を栽培して観察するほうが、子どもたちはずっとたくさんのことを感じ取ることができる。
動画を観るならば、見る(視覚)と聴く(聴覚)だけだ。
一方、実際に畑で野菜を栽培すれば、視覚と聴覚だけでなく、植物や土に触れたり(触覚)、葉や土のにおいを嗅いだり(嗅覚)、収穫した野菜を食べたり(味覚)と、五感で感じ取ることができる。
就学前教育では動画を観るよりも実体験のほうが大切だと思う。
「ICT教育を導入している」というと、何か最先端のことをやっているように聞こえる。
そういうイメージ戦略には騙されたくない。
ICT活用は「手抜き」?
就学前教育でのICT活用は見方を変えると「手抜き」だ。
実際に畑で野菜を栽培するかわりに動画をみせるほうが園の手間も時間もかからないから。
幼稚園では野菜の栽培についてICTを活用して学習するよりも、子どもたちが実際に野菜を栽培したほうがより多くのことを実体験できる。
このことは幼稚園に限らない。
小中学校でも同じだ。
ICTを活用して「動画を観てこどもたちで討論して終わり」にしたほうが、実際に何か手を動かして作ったり、自分の目で確かめるよりも安上がりだ。
こどもたちが耕す畑を準備するよりも「パワポで画像を貼り付けたスライドを作って、説明して、終わり」のほうが楽だ。
手抜き・教育費の削減のためのICT活用はダメだろう。
けれど、ICTが活用されるにつれて、この手の手抜きが増えそうな気はする。