(読書感想)もっと言ってはいけない(著者:橘玲)(その1)男女の知能差について

もっと言ってはいけない

著者:橘玲
初版:2019年
新潮社

本書「もっと言ってはいけない」は、ベストセラー「言ってはいけない」の続編である。

「知能は環境よりも遺伝の影響が大きい」ことを裏付けるデータがこの本には掲載されている。

この本を読んで、いろいろと考えさせられた。

 

男性は女性よりも知能のばらつきが大きい

この本の中でわたしが一番興味深いと思ったのは「男女で知能に差はないが、ばらつきが異なる」という点だ。

具体的に言うと「男性は女性に比べて、知能のばらつきが大きい」ということ。

この本には、男性・女性それぞれのIQ値の分布を示すグラフが掲載されている。


橘玲「もっと言ってはいけない」より作成

実生活でも、

・女性は、男性よりも器用でそつなくこなす人が多いこと

・男性は女性に比べると、出来る人と出来ない人との差が大きいこと

を感じている人は多いだろう。

グラフを見ると、男性・女性のIQ値の分布の違いは一目瞭然である。

平均的なIQ(IQ100前後)の人の割合は、女性のほうが男性に比べて圧倒的に多い。

一言でいえば、女性は「はずれが少ない」し「粒がそろっている」のだ。

一方、男性はIQが平均以下である人の割合が、女性に比べて大きい(赤で囲んだ部分)。

つまり、男性は女性に比べてとびぬけて優れた知能を持つ人の割合が多い反面(青で囲んだ部分)、男性は女性に比べて知能が平均以下の人の割合がずっと多いのだ(赤で囲んだ部分)。

著者もこの本の中で「学習障害や自閉症も明らかに男に多く、連続殺人や猟奇殺人など極端な犯罪を起こすのもほとんどが男である」と述べる。

 

男性の知能のばらつきがもたらすもの

著者は、

「高度化した知識社会では、高校中退ではその後の職業人生がきわめてきびしいものとなる」

「平均寿命が80歳として、15歳でドロップアウトしたら、その後の人生は65年間もある。」

と述べる。

中学生か高校生でドロップアウトしたら、その後のリカバリーは困難が伴うものとなる。

 

低学力層を切り捨てる教育

そんな中で、この国は、低学力層を切り捨てる方向に舵を切ったように見える。

それを象徴するもののひとつが今の英語教育だ。

学校での英語教育は現在、小さい頃から家庭で英語学習をサポートできなければ英語で良い成績がとれないようなカリキュラムになっている。

それゆえ、IQが低い人は、今まで以上に家庭でのサポートがないと英語学習についていくのは難しくなっている。

IQが低い人の層(低学力層)を切り捨てると社会はどうなっていくのか想像すると、明るい未来を思い浮かべることはできない。

 

少子化と未婚率の上昇

低学力層を切り捨てた先にあるもの、そのひとつが少子化である。

少子化の原因のひとつが未婚率の上昇であることはよく知られている。

この本には結婚については書かれていないが、男性の生涯未婚率(2021年)は25.7%である。

つまり男性の4人に1人は生涯一度も結婚しない。

「IQが低い=結婚しない」とは一概に言えないけれども、収入が低い人ほど未婚率が高い傾向があるのは確かだ。

IQが平均以下の男性が教育で切り捨てられば、納得いく仕事に就けず、結婚すらできない。

多くの男性が将来に夢を描けない社会が待っている。

極端な話、この国も一夫多妻制でも取り入れれば少子化は改善するかもしれない。その場合でも、複数の妻を持つごく一部の男性と、依然として結婚できない多くの男性に分かれるだろう。

この国は長らく、分厚い中間層が社会を支えていた。

けれども、それを国が自ら崩すような教育に静かに切り替わりつつあるのだ。

 

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