(読書感想)なぜ日本だけが成長できないのか(著者:森永卓郎)
「なぜ日本だけが成長できないのか」は、最近、すい臓がんステージ4を公表した森永卓郎氏である。
「なぜ日本だけが成長できないのか」森永卓郎(角川新書・2018年初版)
観光地にいる外国人が「日本は物価が安い」と話すのを目にする。
ほかの国は賃金が上がっているのに、なぜ日本だけが成長できず、賃金が安いままなのだろうか。そう思って本書を手に取った。
2018年初版の本書「なぜ日本だけが成長できないのか」には、1990年代にバブル経済が崩壊した経緯・その後の不良債権処理の顛末が書かれている。
バブル経済後にハゲタカファンドがいかに日本社会を蝕んできたかが本書に書かれている。
バブル経済が崩壊した後、優良オーナー企業の倒産が相次いだが、この本を読んで、これらのオーナー企業はハゲタカに狙い撃ちされたのだと今になって気づかされた。
日航123便の墜落事故
本書「なぜ日本だけが成長できないのか」の巻末に、1985年に起きた日航123便の墜落事故についての記載がある。
520名の乗客乗員が亡くなった日航123便の墜落事故は、1970年代以前の生まれの人は忘れることができない事件である。
本書は経済に関する本なのに日航123便の話が出てきたことに面食らったが、森永卓郎氏がどうしても記載しておきたかったのだろう。
本書によれば、日航123便の墜落事故については、いくつかの疑問点があるそうだ。
その疑問点とは、「機体前方部の燃え方が激しいのに対して、機体後方部の燃え方はさほどでもないこと」・「墜落位置を米軍がいち早く特定して救助を申し出ていたのにも関わらず、日本政府が米軍の援助を拒否したこと」・「墜落現場の発表が非常に遅かったこと」などである。
このことに疑念を持った方(事故当時日航で働いていた)が日航123便の墜落事故の詳細を調べた結果が「日航123便墜落の新事実」をはじめとする何冊かの書籍としてまとめられている。
森永卓郎氏は、日航123便の墜落事故の真実を明らかにすべきだと本書で述べている。
そんななかで、2024年冒頭、羽田空港での旅客機の炎上が起きたので非常に驚いた。乗客乗員の全員が救助されたのは不幸中の幸いだった。
正月早々、旅客機が激しく燃えていた映像が流れてやり切れない気分になった。
一億総アーティスト
ところで、森永卓郎氏は以前から「一億総アーティスト」を提唱している。
「人生には搾取する側(ハゲタカ)・搾取される側(ハゲタカの奴隷)・アーティストの3つしかない」と森永氏は言う。
私は森永氏の考え方に賛同する。
我が子たちはアーティストを選択してくれたらいいなと思う。たとえ経済的に豊かではなくても、自分が納得する暮らしができればいい。
森永氏は「多様な生き方を認める社会」を提唱している。
森永氏は言う。
「例えば働き方改革で、みんな女性は働け、保育所整備して働きやすい環境を整備しなさいと言うんですけど、もちろんそれは全然否定しないんですけれども、でも働きたい女性がいる一方で、私は専業主婦になりたいっていう女性もいてもいいんだと思うんです。キャリアを駆け上がっていきたいっていう女性と同時に、別にヒラでいいもんっていう、男性でも女性も一緒なんですけど、ようするに多様な生き方っていうのを認める社会にすべきだと私は思っていてね。」
本当にその通りだ。
みんながみんな、キャリア目指してまっしぐらにならないと生活できない社会は息苦しい。
ヒラでも給料が安くても暮らしていければいい、という考え方があってもいい。