公立幼稚園の廃園について思うこと【2024年】
全国で公立幼稚園の廃園が相次いでいる。
NHKの記事によれば、公立幼稚園は7年間で1,400園以上が廃園になり、全国に4,300あった公立幼稚園のうち3割がすでになくなったとのこと。
廃園問題に揺れている公立幼稚園のひとつが、千葉県佐倉市立佐倉幼稚園である。
報道によると、佐倉市には現状、公立幼稚園が佐倉幼稚園1つしかない。
佐倉幼稚園が廃園になると、佐倉市には公立幼稚園がなくなることになる。
長年地域に愛されてきた幼稚園をなんとか存続させたい、という保護者の思いはよく分かる。
私の次男も公立幼稚園を卒園している。
公立幼稚園が長年地域に親しまれていて、経験豊かな先生と緑豊かな園庭のもと、子どもひとりひとりの思いを大切にする教育をしていることは確かだ。
次男は幼稚園時代を振り返って「学校と違って幼稚園は本当に楽しかった」といつも言っている。
次男が公立幼稚園で学ぶことができて本当に良かったと私は思っている。
その一方で、全国でこれほどまでに公立幼稚園が減っている理由をきちんと考える必要があると思う。
公立幼稚園には素晴らしい環境が整っているのに、入園者が減っていくのは原因があるはずだ。
NHKの報道では、公立幼稚園の入園者減少の原因のひとつして「共働き世代の増加により保育園を選ぶ人が増えた」ことを挙げている。
今の公立幼稚園のカリキュラムは共働き家庭にはかなり厳しい。
共働き世帯の増加が原因で公立幼稚園への入園児童が減少するのならば、公立幼稚園を公立こども園に転換したほうがよい。
いや、公立幼稚園のノウハウを継承していくには「公立こども園への転換」しかないと思う。。
公立幼稚園には発達がゆっくりな子どもたちを受け入れる土台が整っている。
長い間積み上げられてきた公立幼稚園のインフラをこども園として継承することで、発達がゆっくりな子どもを持つ共働き家庭を救うことになる。
共働き世代の増加で、発達がゆっくりな子どもたちの保護者が保育園を選ぶケースも増えている。
ところが、発達がゆっくりなこどもたちに対して適切な保育ができる保育園ばかりではない。
経験が浅いスタッフばかりの保育園もある。
保育園での保育内容に不安がある保護者は少なくない。
一時期はあんなに待機児童が騒がれていたのに、ここ2、3年は全国どこでも少子化で定員割れの保育園が増えている。
定員割れが経営にじかに響く私立保育園は生き残りをかけている。
園児をとられるおそれがあるから、私立幼稚園や私立保育園は「公立幼稚園をこども園に転換すること」に簡単に納得しないはずだ。
公立幼稚園を公立こども園に転換するならば「発達がゆっくりなお子さんを受け入れる施設の必要性」を訴えなければこども園化は進まないだろう、と個人的には思う。
私立幼稚園も私立保育園も定員割れが起きている現状では、私立幼稚園や私立保育園ができないことを公立こども園がやらなければ、こども園への転換は難しいだろう。
こども園に転換すれば、公立幼稚園の保護者だけでなく、こどもを保育園を通わせている保護者も当事者として巻き込むことができる。
公立幼稚園は預かり時間が短い。公立幼稚園の環境の素晴らしさは知っているけれども、長時間働けないから公立幼稚園を利用できないという声を実際聞いたことがある。
そしてもうひとつ。
公立幼稚園にこどもを実際通わせていたわたしは、公立幼稚園の「お手伝いの大変さが敬遠されている」ことも在園児減少の原因だと推察する。
「教育環境が素晴らしいのにも関わらず、入園希望者が減っている真の理由」をしっかりと受け止める必要がある。
次男が通った公立幼稚園の話をしよう。
次男が通った公立幼稚園は保護者のお手伝いが多かった。
公立幼稚園が「保護者と園がいっしょになって子どもたちを育てる」ことを大切にしているからだ。
公立幼稚園はどこも同じような方針だと思う。
次男が通う公立幼稚園では、園主催の行事のお手伝いだけでなく、親の会が主催する行事のお手伝いもあった。
保護者からはお手伝いの負担軽減を求める声が出ていた。
けれども、古参の保護者やOB保護者が現状維持を訴えるため、改善がなかなか進まない。
OB保護者が陰で目を光らせるのは、小中学校のPTAと全く同じ構図だ。
役員になる保護者はお手伝いに価値を置く人が多いため、保護者のお手伝いは一向に減らない。
どこの公立幼稚園も似たような状況だろう。
でも、こんな状況が続くのならば入園者が増えるわけがない。
公立幼稚園をこども園化するならば、こども園化を機に、園行事への保護者参加は残しつつも、たとえば親の会が主催する行事については任意参加とする等、改革を図ったほうがいい。
公立幼稚園は、そこに通う子どもたちと保護者だけのものだろうか?
違うと思う。
公立幼稚園は「公立」だから税金で賄われている。
公立幼稚園に通うこどもたちと保護者だけではなくて、保育園や私立幼稚園の保護者や地域の人たちが「公立幼稚園はあったほうがいい」と思わなければ、公立幼稚園は存続しないのだ。
そのためには、例えば、公立幼稚園の豊かな教育環境(園庭やプール、ホールなどの施設)を地域の保育園に貸し出す・(今は園庭もプールもない保育園がたくさんある)・地域の保育園の子どもたちを園行事に呼ぶ・発達がゆっくりなお子さんの保育に関する研修をやる等が考えられる。
公立幼稚園が率先して「地域みんなの園」になることが大切だ。そうすることで、公立幼稚園の存在意義は周りに伝わるだろう。
「セカンドベスト」でいいと思う
とはいえ、公立幼稚園をこども園に転換するとなると、働く保護者が増えて「保護者全員でお手伝いする暖かい園の雰囲気が失われる」ことを懸念する人が居るのも確かだ。
「セカンドベスト」という言葉がある。
「セカンドベスト」とは、最善策ではない、次策を選ぶこと。
第1希望は実現できなかったけれども、第2希望を実現する、という意味だ。
公立幼稚園のこども園化はまさに「セカンドベスト」だと思う。
公立幼稚園としては残せなくても、公立こども園として残ればいい。
全国の公立幼稚園が第1希望(公立幼稚園を存続させること)にこだわって廃園に追い込まれている。
それならば、公立幼稚園の存続にこだわらず、公立こども園に転換したほうがいいと思う。
公立こども園に転換すれば定員はすぐ埋まるだろう。
こども園化により、保護者全員でのお手伝いがなくなったとしても、経験豊富な先生と素晴らしい教育環境がこども園にそのまま残るのならばそれでいいとわたしは思っている。