改めて思う、氷室京介の「声」

バブル絶頂の頃、BOØWYというグループが存在した。

60年代後半から70年代初めに生まれた人はBOØWYを知らない人はいないだろう。

BOØWYは一躍頂点に立った途端に、はやばやと解散してしまったのだ。

 

改めて調べてみると、BOØWYがリリースしたシングルはたった7枚。

1986年9月にリリースしたシングル『B・BLUE』がヒットしたのち、1987年リリースのシングル『ONLY YOU』『MARIONETTE』『季節が君だけを変える』がたて続けにヒットしたが、同年12月24日に解散が発表された。この4曲は久しく聞いていなくても今でも口ずさめるほど、わたしは当時聴き込んだ。

 

BOØWYは女性に人気のアイドルバンドではなく、男性ファンが多かったのも特徴だ。なにせカッコよかったから。

おそらく、少なく見積もっても、当時の男子高校生の半分くらいはBOØWYを聴いていたと思う。

 

BOØWYの絶頂期はわたしの高校生活とぴったりと重なる。

当時、BOØWYの高校生コピーバンドが雨後のタケノコのごとく次々と誕生したのをよく覚えている。

 

2024年紅白にB'zが出演して大きな話題になった。

2024年紅白でのB'zのパフォーマンスは素晴らしかった。

でも、そのときに思い出したのだ。B’zより前に、BOØWYというバンドが存在していたことを。

 

わたしはBOØWYを聴き込んでいたせいか、B'zにのめり込むことはなかった。

氷室京介だけで十分、満足していたんだと思う。

 

BOØWYは解散前から「メンバー間がぎくしゃくしている」という噂があった。

当時はインターネットがなかったから、おそらく、BOØWYのコンサートに行った同級生がステージでのメンバーのふるまいをみたときの感想が広まったのだと思う。

そのうちに、あれよあれよという間にBOØWYの解散が決まった。

 

当時の状況を知る関係者の証言から、ヒットした『B・BLUE』『ONLY YOU』『MARIONETTE』『季節が君だけを変える』はメンバーの関係が上手くいってない状況で作られたのだとわかる。

メンバー同士が上手く行っていなくてもこんなに素晴らしい曲が産み出されたことが驚きである。

 

BOØWY時代を含めた氷室京介の曲を今あらためて聞いている。

氷室京介の声は、ハスキーでかつ、甘い。

ハスキーなだけ、甘いだけ、の声の人はたくさんいるけれども、氷室京介の声は「渋いけど甘い」、鼻にかかった官能的な声だ。

 

たとえとして的確ではないかもしれないけれども「西城秀樹のハスキーボイスに郷ひろみの甘さが混ざっている」といえばよいだろうか。

そして、氷室京介は、声を張り上げるような歌い方をしないのも特徴だ。

高校生の頃にBOØWYの曲を聴いていたときは、そんなに深く考えて曲を聴いていなかったことに気づいた。

 

氷室京介というのは、自らの「不良性」が魅力だということを自分でよく分かっていた人だと思う。BOØWYはもともと「暴威」という名前で、群馬・高崎の暴走族出身のメンバーによるバンドだ。

「氷室京介は歌手になっていなかったらヤクザになっていた」とスタッフが証言しているが、氷室京介はその不良性で人々を虜にした点でショーケンを彷彿とさせる。

BOØWYはロックンロールなんだもの、反体制がテーマなのは当然だ。

 

『MARIONETTE』の作詞は氷室京介。

昔この曲を聴いていたときは詞について深く考えなかったけれども、齢を重ねてから改めてこの曲の詞を読むと、「疑うことにいつから慣れたの」等、反体制というか反逆性を強く感じる。若い時よりも今この曲の詞を読むほうが心に染み入る。

氷室京介という人は高卒で就職して働いていたときに、勤め人として働く自分の生き方について色々と思うことがあったんだろうなと想像する。そういえば今はこういう反体制の曲をあまり見かけない。

 

氷室京介のソロシングル『KISS ME』のPVを見ると、氷室京介は、ロックスターには何が求められるのかよく分かっている人だな、と思う。

今の世の中では、こういう「不良性」で惹きつけるタイプの歌手はもう出てこないだろう。