無痛分娩が増えていることについて(2025年)
知人が最近出産した。
知人から聞く最近のお産の状況の変化に驚く。
都市部(少なくとも東京23区内)の病院では「無痛分娩は当たり前」の状況になってきたようだ。
東京都は少子化対策のため、無痛分娩に補助金を出す方向で進んでいる。
以前は「自然なお産」を売りにしていた病院でも無痛分娩を始めていると聞いた。
このまま行くと、無痛分娩をせずに経膣分娩を選択するのは「一部の変わった人」だけ、みたいになるんじゃないかと危惧している。
どんなお産を選択するかは人それぞれ。
無痛分娩を選択するのも各人の自由だ。
無痛分娩が上手く行けば、痛みもなく体力の消耗も少なくて済むのは確かだ。
ただ、無痛分娩でお産が上手く進行せず、最終的に帝王切開になるケースが少なくないと聞く。この場合、帝王切開はリスクを回避するために必要な処置である。
リスク回避のため、今は多くの病院で「帝王切開経験者のお産は原則、帝王切開」である。
最初に無痛分娩を選択しなければ、経膣分娩できたケースもあるだろう。
経膣分娩していれば、次回以降も経膣分娩を選択できるのに、もったいない。
私は経膣分娩と帝王切開の両方を経験している。
経膣分娩でトラブルがなければ、帝王切開よりも経膣分娩のほうが産後の回復がずっと早いことを実感している。
帝王切開を経験してみてわかったこと。それは「帝王切開は術後、回復して歩けるようになるまでが本当につらい」ということだ。
帝王切開は術後の回復が辛すぎて、次回も帝王切開で産むかと思うと、もうお産はしたくない、とすら思う(年齢的にもう産むことはないだろうが)。
無痛分娩を選択したがために結果的に帝王切開になり、それ以降のお産でも帝王切開を余儀なくされることになり、お産のたび、回復のためにつらい時間を過ごさなければならないのは、とてももったいないと思う。
経膣分娩は確かに「痛い」。
でも、ずっと痛いわけじゃない。
正しく言うと「陣痛があるときだけ痛い」のだ。
陣痛には波があり、最初は20分に1回、15分に1回、というふうに、陣痛の間隔はだんだん短くなっていく。
陣痛の最初から「ずっと痛い」のではなく「陣痛がないときは痛みが消える」のだ。
ここで何度も書いているが、促進剤投与などの特別な処置をしなければ、経膣分娩では、陣痛が最も強いときでも、陣痛はおよそ1分間しか続かなくて、次の1分間は陣痛がふっと消える。
つまり、仮に、最終的に赤ちゃんが出てくる段階(陣痛が一番強い時間)が1時間だとすると、その半分の30分間は陣痛が消えるのだ。
上の子を経膣分娩で出産したときは、赤ちゃんからのシグナルを体で感じて、出産時の体位を変えたり陣痛がないときに水分を補給したりと工夫しながら出産するのがとても楽しかった。
妊婦の工夫を許してくれる病院で出産したのも良かった。
経膣分娩はお産の工夫のし甲斐があるから、ほんとうに楽しいのだ。