(読書感想)小泉放談(著者:小泉今日子)
この本「小泉放談」は、小泉今日子が「50代以降をどう生きるか」を探るべく行われた、25名の「人生の先輩」との対談集である。
対談相手を列記する(敬称略)。
YOU・浜田真理子・江國香織・吉本ばなな・中野明海・熊谷真実・樹木希林・浅田美代子・平松洋子・上野千鶴子・美輪明宏・高橋惠子・槇村さとる・芳村真理・渡辺えり・いくえみ綾・増田令子・淀川美代子・甲田益也子・伊藤蘭・片桐はいり・湯山玲子・中野翠・広田レオナ・小池百合子。
小泉今日子の持つ人脈の、なんとまあ、多彩なことに驚かされる。
長い間の芸能活動を通して、年上の先輩方と関係を培ってきたのだろう(上野千鶴子氏が対談でそれとなくこの点を指摘している)。
「小泉放談」では、いろいろな人がそれぞれ、いろいろなことを言っているのが面白い。
「小泉放談」の対談で語られた数多く言葉の中に、読者にしっくりくるものがきっと見つかるはず。
この本「小泉放談」の最後に小泉今日子による書下ろしエッセイが形成されている。
このエッセイによれば、小泉今日子が48歳のとき、8歳年上の実姉が56歳という若さで亡くなった。この姉の死が、残りの人生を考えるきっかけとなって、この本に載っている対談を行う引き金になったようだ。
この本の中で印象に残ったのが上野千鶴子氏・広田レオナ氏との対談である。
上野千鶴子氏の「クリエイティブな職業では50歳を超えると自己模倣が始まる」との意見に納得した。
そういえばわたしも40歳を過ぎた頃「このまま、この仕事を続けてもコピーを繰り返すだけ」だと気づいた。そして、45歳過ぎで次男出産を機に仕事をいったん辞めたのだった。
プロデュース業・監督業をしている小泉今日子に対して、女性がトップになったときの「人を動かすことの大変さ」を上野氏は示唆する。
上野氏によると、男性がなりたいと思う職業上位3つは「野球監督・映画監督・指揮者」だそうだ。
そんな、男性が憧れるプロデュース業をソツなくこなす小泉今日子はさりげなくて、カッコいい。
でも私自身は男性として生まれたとしても、「野球監督・映画監督・指揮者」は御免だ。そういう男も少なくないはずだ。
広田レオナ氏は幼少時から体が弱く、病気とは縁が切れない人生だったそうだ。
それでも広田氏は子どもを2人出産し、孫もいる(らしい)。
2人目出産時の麻酔が原因で、産後しばらくの間、体がほとんど動かない生活を送っていたと広田氏は語る。
幼少時はバレエに専心していて、学校にもあまり通っていなかったのこと。
当時はのんびりしていて、それでも何とかなったのだ。
才能があれば、昔の方がある意味、自由な生き方が出来たんだなあ、と思う。
体の自由がきかない生活を長く送ったことを芸術に昇華させているような、広田氏はそんな方にお見受けする。
この本の初版から7年以上が経ち、小泉今日子も還暦に近づいている。
還暦を迎える小泉今日子は次に何を想うのだろう。
小泉放談
小泉放談
小泉今日子
初版2017年
宝島社