ニューズウイーク日本版2020年12月22日号「ルポ特別養子縁組」を読んだ感想
TBS元アナウンサーの久保田智子氏が養子を迎えたことを先日ネットで知った。
私がこの特別養子縁組の問題に興味を持ったのは、養子縁組事情が海外と日本とで大きく異なること、そして、日本が実親の元で暮らせない子どもを家庭養育を推進する方向に舵を切ったことを知ったからだ。
ニューズウイーク日本版2020年12月22日号「ルポ特別養子縁組」で特別養子縁組を取り上げていると知り、早速「ルポ特別養子縁組」を読んでみた。
ルポ特別養子縁組
「ルポ特別養子縁組」には久保田氏が特別養子縁組に至るまでの道のりが書かれていた。
それとともに、久保田氏が特別養子縁組のあっせんをお願いした民間団体の担当者の話が載っていた。
「ルポ特別養子縁組」を読むと、久保田氏が養子あっせんをお願いした民間団体の担当者はしっかりとした方で、養親希望者だけでなく生みの親に寄り添う姿勢がある方で好感が持てた。
上述の久保田氏のほかに、特別養子縁組をした別のご夫婦の話と、特別養子縁組の当事者とその親へのインタビューが掲載されていた。
できれば養子を受け入れる側だけでなく、養子を出す側(生みの親)が特別養子縁組についてどう思っているかを知りたいと思った。
特別養子縁組が増えることは良いことなのか
日本は特別養子縁組を増やす方向だ。
けれども、果たして特別養子縁組をどんどん増やすことが子どもにとって良いことなのだろうかという疑問は残る。
今、日本で特別養子縁組に携わっている方々(斡旋団体・養親希望者の双方)は善意の方がほとんどだと思う。
けれども、特別養子縁組の件数が増えてひとつのビジネスが形成されれば、特別養子縁組を仲介する業者にお金が入ってくる仕組みができあがる。
一般企業が派遣社員を使う場合と同じだ。
あっせんをすればするほど仲介業者にお金が入る仕組みになっている。
最悪の場合、たとえばアメリカのように、養子縁組を繰り返して子どもたちが養親を転々とする状況が生じる可能性がある(その間、仲介業者にどんどん報酬が入る)。
そんな状況はあってはならないと思う。
日本よりも養子縁組のハードルがずっと低いアメリカでは、養子縁組によって暖かい養親に迎えられる子どもがたくさんいる反面、養親が養子を性的虐待・育児放棄するケースも少なくない。
特別養子縁組に長く取り組んでこられた河野美代子医師はご自身のブログで、養子縁組で高額のお金が動くのはあってはならないと述べている。
そして、予期せぬ妊娠を防ぐために性教育の大切さを全国の学校や施設で説く活動をされている。
そして、「ルポ特別養子縁組」では書かれていなかったけれども、特別養子縁組の数が大きく増加しないのは、特別養子縁組に抵抗がある実親が少なくないせいもあると聞く。
特別養子縁組というのは家庭裁判所の決定により15歳未満の子どもを実子とする制度である。
本来実子ではない子どもを家庭裁判所の決定で法律上実子にするのだから、特別養子縁組で養子を迎え入れるということは非常に重い判断だ。
特別養子縁組を待っているご夫婦はたくさんいると思う。
ただ、特別養子縁組は子どもが親を選べない制度である以上、特別養子縁組はまず第1に「こどものための制度」であることを軽視してはならないと思う。