(読書感想)堤清二と昭和の大物(著者:松崎隆司)

堤清二と昭和の大物

著者:松崎隆司
初版:2014年
光文社

 

昭和の大物にまつわるエピソードが盛りだくさん

この本には昭和の大物に関するエピソードがたくさん載っている。

タイトルからすると、この本は堤清二(以下、登場人物は敬称略)に関する本だと思うだろう。

ところがそうではない。

この本には堤清二というよりも、堤清二と関わりがあった昭和の大物の興味深いエピソードが満載なのだ。

堤清二という人は、父親から西武百貨店の経営を任される前は、国会議員である父親の秘書をしていた。

そのおかげで面識がある政治家も多かったようで、政治家から財界人・文化人・右翼の大物まで幅広い人たちと親交があった。

吉田茂・田中角栄・大平正芳などの政治家、本田宗一郎・井深大・土光敏夫・五島昇などの財界人、三島由紀夫・井上靖・千宗室などの作家文化人、小佐野賢治・児玉富士夫・笹川良一・白洲次郎などの昭和の大物の多岐にわたるエピソードが掲載されている。

心温まる話もあれば、残念な人柄が垣間見える話もあるのが面白い。

 

思わぬ古い話が掲載されている

昭和の大物のエピソードだけでなく、一橋大学が国立の広い敷地に移転した経緯や国立学園小学校が設立された経緯など、思わぬ話が載っているのが面白い。

国立学園小学校というのはもともと、一橋大学の教職員の子弟を預かるために設立された学校だそうだ。

また、父親である堤康次朗は常々「寄付などは絶対にしない」と公言していたのに関わらず、第二次世界大戦後、資金難に陥っていた学習院に多額の寄付をしており、寄付金の出資者を自分ではなく息子の堤清二の名義にしていたというエピソードが興味深い。