(読書感想)ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム(著者:古谷晋一)

ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム

初版:2012年
古谷晋一
春秋社

この本は、ピアニストを脳科学から分析した画期的な本だ。

この本を読んで、ピアノは「手で弾くもの」ではなく「脳で弾くもの」だと感じた。

初版から10年以上経っているが、この本が出版されて以降、ピアニストの脳について論じた本は見当たらない。

ピアノと科学が好きな人におすすめの本である。

 

指をバラバラに動かせるのは脳のおかげ

この本によてば、ピアニストが練習を積むことで、筋肉など手指の物理的な機能が発達するというよりも、脳が発達して指を正確かつ最小限の力で動かせるようになるらしい。

ピアノの初心者は中指と薬指を独立して動かすことが難しいが、プロのピアニストは、5本の指を独立して正確に動かすことができる。

ピアニストが5本の指をバラバラに動かせるのは、各指の機能が発達するからというよりも、各指を独立して動かせるよう脳が発達するからだそうだ。

ピアノ初級者である私もいまだ、指を独立して動かすことが難しい。私の場合、中指や薬指だけでなく、親指を動かす時にも小指が動く傾向がある。

「使いたい指だけを独立して動かす」には、使いたい指を動かしている間、他の指を脱力する必要があるが、これがなかなか難しい。

私の場合、親指を動かすとき小指を脱力するよう努力しているが、短期間ではなかなか改善しない。

各指が独立して動くようになるには長年の努力が必要なのだ。

 

プロのピアニストは無駄な力を使わない

この本は、素人のピアニストはピアノを弾く際に無駄な力を使っているが、
プロのピアニストというのは、必要最小限の力でピアノを弾いている。

素人ほど「りきんで無駄な力を使っている」のはどの世界でも共通するということだ。

ピアニストは「脱力できれば一人前」のようである。

いつの日にか、きちんと脱力できるピアノ弾きになりたいものだ。