特別養子縁組というもの(その2)

今日は、前回(特別養子縁組というもの(その1))の続き。

特別養子縁組というもの(その1)にも書いたように、最近、有名人が特別養子縁組を選択したという話題がメディアに頻繁に取り上げられている。

インターネットだけでなく、雑誌でも特別養子縁組に関する特集が組まれている。

先日行った美容院で読んだ女性向け雑誌にも特別養子縁組と里親制度のことが書かれていた。

雑誌の記事を読むと、インタビューを受けている里親や特別養子縁組に関わる方々は善意で里親や特別養子縁組の普及に取り組んでいることがよく伝わってくる。

 

特別養子縁組を普及させたい国

日本では国を挙げて特別養子縁組制度を普及させようという方針だ。

なぜ国が特別養子縁組制度を普及させようとしているのかというと、日本では長年、施設養護といって、親が育てられない子どもたちを施設で育てるのが主流だったのを、施設養護から家庭的養護へと転換させたいためである。

子どもが将来、自己肯定感を持って一社会人として生き抜いていくためには、まずは子どもが特定の大人と愛着関係を結ぶことがとても大切だ。

そのためには家庭的な雰囲気の中で子どもが生活するほうが好ましいとされている。

欧米では施設養護ではなく家庭的養護が主流だ。

日本でも施設養護を段階的に少なくする代わりに、特別養子縁組や里親制度を普及させることで、事情があって親が育てられない子どもたちを家庭的な雰囲気の中で育てていくという流れになっている。

 

メディアの報道にみる実母の存在の薄さ

ところで、最近報道されている有名人の特別養子縁組に関する雑誌やネットの記事では、特別養子縁組をした子どもの実の母親についてはほとんど取り上げられていない

正直、この点がとても気になる。

特別養子縁組に長年携わってきた産婦人科医の河野美代子先生はそのブログで、他の養子あっせん機関での実母の存在の薄さについて触れている。

私が特別養子縁組のお世話をする理由①

私が特別養子縁組のお世話をする理由②

私は河野美代子先生がブログで書かれていることに同意する。

子どもの母親は妊娠中自分で育てられるか・人に子どもを託すかをずっと自問する。

そして、自分では育てられないという結論に達したのち、猛烈な痛みに耐えて子どもを出産した後に、養親に子どもを託すのだ。

それは本当に壮絶な経験だと思う。

河野先生はブログで、産婦人科医として子どもを産む側(実母)をずっと見守り続けるからこそ、養親になる人には実母の心情に思いを馳せてほしいと述べている。

まったくその通りだと思う。

ちなみに、河野先生は営利として特別養子縁組をされていない。

特別養子縁組に関するお仕事を長年、手弁当でされているのには頭が下がる思いだ。

河野先生は、特別養子縁組における子どものあっせんでお金で動くことに反対のスタンスをとっている。

お金で子どもが動くようになると、お金のため・生活のために子どもを出産するような事態が起こり得るからだろうか。

あるいは、あっせん業者が営利目的で子どものあっせんを行えば、こどもの思い・実母の思いが無視されてあっせんが行われることを強く懸念しているからだろうか。

河野先生のブログを読んでいると、河野先生が特別養子縁組に長年奔走されてきたのがよく分かる。

長年、特別養子縁組に携わってきた重みが河野先生のブログからひしひしと伝わってくる。