癌を見抜けない

父は肺癌で亡くなった。

肺癌が見つかったときはフェーズ4の末期がんだった。

父にはかかりつけ医はいた。

父が亡くなる半年ほど前から
少しずつ体調が悪くなっていったので、
かかりつけ医にちょくちょくかかっていた。

父が亡くなる2か月ほど前にも、
父は「背中が痛い」と言って、
かかりつけ医を受診した。

その状態になっても、
かかりつけ医は父が癌とは思わなかったようで、
レントゲンひとつとることもなく、
背中に貼るシップ薬だけを処方されて、
父はかかりつけ医から帰ってきた。

家族はみんな「何かおかしいのではないか?」とうすうす思った。

その直後、父の背中の痛みは歩けなくなるほど強くなった。

父は背中が痛くてどうしょうもなくなり、救急車を呼んだ。
総合病院に運ばれて精密検査をしたところ、
父が癌だと分かった。

 

慎重な性格が災いしたのか

かかりつけ医は誠実で慎重な性格。
ずるいことをしないタイプで、
薬をばんばん処方したりはしない。

東大(医学部以外)を卒業した後に、
地方の国立医学部を受験して医師になった人だから、
真面目で勉強が好きな人・学業優秀な人に違いない。

東大卒業後に医師を志し、
医学部に入りなおすというのはよく聞く話だ。

けれども、
父のかかりつけ医だった医師は、
どうも勘が鈍いのだ。

ほかの家族もそこのかかりつけ医を受診していて、
かかりつけ医の勘の鈍さを実感している。

頭が良いことと、勘が鋭いこととは別の話なのだろう。

勘が鈍いというのは、
医師としてかなりマイナスな資質だと思う。

かかりつけ医は真面目な性格だけに、
わざと癌を見落としたとは思えない。

身内の死後、
身内が癌で亡くなったことをかかりつけ医に伝えたところ、
とても驚いていた。

癌が見抜けなかったのは、
かかりつけ医の慎重な性格が、
かえって災いしたのかもしれない。