(読書感想)ルポ教育困難校(著者:朝比奈なを)
この本には、教育困難校の実態と、教育困難校にいる生徒やそこで働く教師たちの勤務内容や考えなどが書かれている。
教育困難校とは巷で言う底辺校のことだが、そこに通う生徒たちの気持ちを尊重するため、この本では底辺校という言葉は使わず、教育困難校という言葉を使っている。
著者の「教育困難校にもっと注目してほしい」という気持ちが伝わってくる本
ふと思う。
この本を手にとる人はどんな属性を持つ人なのだろうか、と。
この本を読むのはきっと、教育関係者がほとんどだろう。
でも、教育困難校にこどもを通わせている保護者・教育困難校にこどもが進学するかもしれない保護者にこの本をぜひ読んでほしい。
教育困難校にこどもを通わせる保護者は、こどもの教育に関心がない人(または、関心はあるが仕事が忙しくて時間がない人)が多い。この本でもその点について指摘がある。
ほぼ全員が公立中学に進学する地方は別だが、都市部の公立中学の教育がなかなか変わらないのは、都市部では中学受験で教育熱心な家庭の国私立中学に進学するため、教育に関心がある保護者が公立中学には少ないことが原因のひとつだと私は思う。
だから、教育熱心な保護者は教育困難校など眼中にない人が多いし、進学校に通う生徒は、教育困難校の実態など知らないのだ。
ならば、保護者以外に誰が、教育困難校に通う生徒に関心をもってくれるのだろうか。
この本を読んで思ったこと
この本の著者は元都立高校の教師。
「教育困難校には、中学校はおろか小学校の内容も理解していない生徒もいる」とこの本には書かれている。
この本を読んで思ったこと。
小中学校で成績下位層だったであろう教育困難校に通う生徒には、義務教育である中学卒業程度の学力をつけてから社会に出してあげたい。
成績下位層の生徒は性格的に優しい生徒も多く、そういった生徒は保育や介護の仕事に従事することが多いとこの本に書かれている。
保育や介護の仕事に就こうと思ったとき、義務教育卒業程度の学力があれば、保育士や介護士などの筆記試験がある資格試験に合格でき、生計を立てることができる。
ところが、実際は、小学校低学年から成績下位層を切り捨てている。次男を公立小に通わせていて、そう感じる。
教育困難校に進学する生徒は、小中学校の段階で切り捨てられた生徒が多いのだろう。
公立中高一貫校が全国にできはじめた頃から、成績上位層に教育予算を集中投下し、成績下位層を切り捨てる方向に国全体が舵を切り始めたようだ。
実際、我が家がある地域では「小学校入学時からすでに学力が二極化している」にも関わらず、学校では真ん中レベルの生徒に向けて授業をするから、成績上位層にとっても成績下位層にとっても、自分のレベルに合った授業は公立小中学校では期待できない事態になっている。
思い切って、小学校高学年は成績でクラスを2分割にして、成績上位層には思考力を伸ばす授業を、成績下位層にはじっくりと基礎学力をつける授業をしてもいいんじゃないかと思う。
ルポ教育困難校
朝比奈なを
初版:2019年
朝日新聞出版