(読書感想)コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな(著者:大櫛陽一)
50を超えると健康診断でひっかかる項目が一挙に増えてくる。
特に女性は更年期を迎えるとコレステロールと中性脂肪の数値が上昇し始める。
「できるだけ薬を飲まず、生活習慣の改善で生活習慣病を予防したい」と思い、この本「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」を手に取った。
大櫛陽一「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」2008年・祥伝社新書
「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」は2008年初版の本だが、コレステロール・HDL・LDLの作用機序がきちんと説明されている良著だと思う。
「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」をバイブルにして、今後、健康診断でのコレステロール・中性脂肪の値を確認していくつもりだ。
ただし家族性高コレステロール血症の人は例外
「コレステロールと中性脂肪で薬は飲むな」には著者自身が実際、薬に頼らずにコレステロールと中性脂肪を下げるために実践した運動の内容・コレステロールと中性脂肪の値の推移が記載されており、とても参考になる。
ただひとつ留意すべきは、家族性高脂血症(現在は、家族性高コレステロール血症と改称)の人は心筋梗塞を発症しやすいためコレステロール・中性脂肪の薬を飲む必要がある場合が多い、ということ(この点について著者はこの本で何度も繰り返し説明している)。
家族性高コレステロール血症の人は約500人に1人だそうだ。20代からコレステロールの値が高い人は家族性高コレステロール血症の可能性があるとのこと。
コレステロール・中性脂肪のまとめ
この本におけるコレステロール・中性脂肪に関する記載をまとめた。
コレステロール
総コレステロール = LDL + HDL + VLDL(中性脂肪のおよそ2割)
コレステロールは体の構造物(細胞膜)や情報伝達物質として使用される。
つまりコレステロールは体になくてはならないものである。
中性脂肪
中性脂肪はエネルギー備蓄庫として使用される。
言い換えれば、余分なエネルギーがなければ中性脂肪はすぐ下がる。
ゆえに中性脂肪は運動や食事量の調整ですぐ下がる。たとえば健診前に食事量を減らすと、わりとすぐ下がる。
中性脂肪を下げるには、空腹時の有酸素運動が効果的。
空腹時の有酸素運動はまずグリコーゲンが燃えて点火剤となり、次に中性脂肪が燃える。
HDL
HDLは古くなった組織が肝臓に回収されるときの姿である。
HDLは肝臓でLDLに作り直される。
運動不足で新陳代謝が落ちるとHDLが低下する。
LDL
8割が肝臓で作られる・食事からは2割(→食事から受ける影響が少ない。つまり、高LDL=体がLDLを必要としている)。
たとえば卵にはLDLが多く含まれるが、卵を食べたからと言ってLDLがすぐに高値になるわけではない。
卵には抗炎症作用があるため、卵を多く食べる人のほうが体内の炎症が抑えられて体内のLDLの必要量が下がるため、血中LDLは低くなる。
卵の摂取は加齢黄斑変性症や白内障を予防するという報告もある。
「最低1日3個」コレステロールを気にせず卵をどんどん食べるべき理由
運動による改善(著者の例)
中性脂肪の値を改善するために著者が実際に行った運動は以下の通り。
・昼食前に45分間のランニング(有酸素運動)
・夕食前に週2回のスイミング(有酸素運動)
・就寝前に15分間のスクワット・腹筋・ダンベル(無酸素運動)
自分の好みや生活スタイルに合わせて、たとえばランニングをウォーキングに変更してもいいと思う。
女性のコレステロール値について
更年期以降の女性はLDLが高くなる。
この本が出版された2008年当時は、男性の2倍の女性にコレステロール低下薬が処方されていた。
しかしながら、更年期以降の女性はLDLが多少高くても心筋梗塞を起こすリスクが上昇しないため、欧米では更年期以降の女性に積極的にコレステロール低下薬を投与することはない。
2008年当時「日本では健診を受けた閉経後の女性の半分が『高脂血症』と診断され、男性の2倍の女性にコレステロール低下薬が投薬されている事実」を知った米国およびドイツの女性医師(教授)が「欧米ではあり得ないことだ」と驚いていたと、この本に書かれている。
欧米からの指摘があったのだろうか、2014年に日本人間ドック学会から男女別のコレステロール基準値が発表され、女性については全体的にコレステロールの基準値が男性よりも高めの設定に変更されている。
現在は、女性は更年期以降にコレステロール値が高くなっても、過剰に気にする必要はないといわれているようだ。
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