8小節のギターソロ(1)チェリーブラッサム(松田聖子)とモンロー・ウォーク(南佳孝)

たった8小節なのに忘れられないギターソロがある。

忘れられないギターソロは、たった8小節で曲を異次元空間に運んでくれる。

今回は、そんな8小節のギターソロがある私の好きな2曲を紹介する。

70年代80年代の歌謡曲の中には「おおっ!」と思うようなギターソロが隠れている。

 

唄ものの曲でギターソロはサビに入る前や、曲の1番と2番の間に設けられていることが多い。

ギターソロは曲調をガラリと転換したり、サビに向かう前に盛り上げる役割をしてくれる。

 

チェリーブラッサム(松田聖子・1981年)

『チェリーブラッサム』は1981年1月21日に発売された松田聖子の4枚目のシングルレコードだ。

 

『チェリーブラッサム』が発売された当時、わたしは小学生だった。

松田聖子がテレビでこの曲を歌っている姿をわたしがよく見かけたのはまだ冬だったと記憶している。

 

まだ寒い時期にリリースされたこの曲、『チェリーブラッサム』というタイトルから分かるように「春の桜の花」をイメージした曲なのだが、戦略的に。まだ冬の時期にこの曲を発売したといわれている。

この曲でギターを弾いているのはスタジオミュージシャンの今剛 氏である。

70年代80年代のアイドル歌手の曲の演奏は超一流の演奏家によるものが多いことはよく知られている話である。

 

『チェリーブラッサム』はギターソロだけでなく曲全体を通してギターのフレーズが印象的な曲だ。

歪んで重いギターの音が耳に残る。

メロディーだけでなく、ギターのフレーズを覚えていて歌える曲は多くないが、『チェリーブラッサム』はそんな曲である。

音楽的知識がない小学生のわたしに自然にギターのフレーズを覚えさせたほど、この曲のギターの演奏は秀逸なのだ。

歌謡曲でギターが印象的な曲を挙げろと言われたら、沢田研二『危険なふたり』とともに、松田聖子『チェリーブラッサム』をわたしは挙げる。あともう1曲はどれだろうか。

 

『チェリーブラッサム』では終始、松田聖子のボーカルに呼応するようにギターのフレーズが語りかけていく。まるでボーカルとギターの「合唱」のように。

圧倒的なのは、やはり8小節の短いギターソロだ。

「キュイーン」という感じの鋭いフレーズが曲をクライマックスへとを盛り立ててくれる。

 

松田聖子は優れた数多くの作曲家に曲を提供してもらっているが、なかでも『チェリーブラッサム』や『夏の扉』などの財津和夫氏が作曲した曲がわたしには心地良く感じる。

 

モンロー・ウォーク(南佳孝・1979年)

南佳孝の『モンロー・ウォーク』は1979年発表。来生えつこ作詞・南佳孝作曲・坂本龍一編曲である。

翌年1980年に郷ひろみが『セクシーユー』というタイトルでこの曲をカバーしたのは有名な話である。

 

この曲でギターを弾いているのは鈴木茂氏。

この曲のギターソロも8小節。

ほかの楽器のパートを決して邪魔しない、地味でシンプルなギターソロだが、けだるい雰囲気がするのが良い。

そして、このギターソロはおそろしいくらい8小節内にピタリとおさまっている。

このピタリ感が小気味いい。

鈴木茂氏以外の演奏者も豪華で、キーボードは坂本龍一氏、ドラムは高橋幸宏氏、ベースは小原礼氏。

 

結局、私は、小学生の頃に耳にした70年代後半・80年代初頭の音楽が好きなんだろう。

今の音楽業界というのは財政的な事情で、70年代80年代みたいにお金をかけて音楽を作れない状況だと聞く。

至極残念である。

 

これからも8小節のギターソロの名曲を紹介していく予定だ。