保育園の園舎について思うこと
少子化である。
2024年の年間出生数が70万人を割った。
今までは保育園足りない・保育園足りない、と大騒ぎだった。
けれども、これからは少子化で保育園が定員割れし、「どの保育園をなくそうか」という話に移行していくと思う。
10年前、2015年前後は「保育園足りない、でもお金も足りない」から「公立保育園を民営化して、浮いたお金で私立保育園を新設しよう」という動きがまだ残っていた。
けれども最近は、以前と比べると公立保育園の良さが見直されていると思う。
公立園の先生方は私立園の先生方に比べて勤務年数が長いのは確かだ。なぜなら、公立園の先生方の離職率は私立園に比べて格段に低いからだ。
どんな仕事でも長く働いているからといって能力が高いとは言い切れないけれど、先生方が頻繁に変わる状態はこどもたちにとって良い影響を与えない。
全国の多くの公立保育園が園舎の老朽化で建て替えの時期に来ている。
いわゆる団塊ジュニアのこどもたちを受け入れるために、60年代70年代にたくさんの公立保育園が全国に造られ、50年以上経過して建て替えの時期になったのだ。
保活で地域の公立保育園を見学したことがある。
おそらく公立保育園を10園以上、見学したと思う。
そのうちのいくつかは今はすでに取り壊されてしまったが。
公立保育園というのは学校と同じで、建て方がどこも非常に似ている。
公立保育園は公共施設だから、園舎自体が没個性なのは致し方ないのだろう。
古い公立保育園の園舎は大抵、1階は大きい子(3・4・5歳児)の部屋で、2階は小さい子(0・1・2歳児)の部屋。
2階の部屋のベランダは日当たりがとても良い。
園舎の前に園庭があって、園庭から直接1階の部屋に上がれるようになっている。
園庭が広ければ、備え付けのプールが庭にある。
都市部の公立保育園の園舎はどこもこんな感じだと思う。
60年代・70年代に建てられた古い公立保育園を見学して気づいたことがある。
どこも「南向きで日当たりが良い」のだ。
日当たりを考慮して保育園が建てられたことがわかる。
そして、園舎に滑り台やうんていなどの遊具がくっついていることが多い。遊び心があるのだ。
私が住む自治体の公立保育園に限った話だろうか。
いずれにせよ、60年代・70年代に建てられた古い公立保育園の園舎は「こどもたちが過ごす場所」として相応しいかどうかを考慮して造られたことがわかる。
対照的に、待機児童が騒がれ始めてからできた新しい保育園は園庭もなく、ベランダすらない園が少なくない。
保育園の数を増やすことばかりに神経を注いだ結果「子どもたちが過ごす場所」として相応しいかどうかには気を配らずに建てられたのだと思う。
50年前は当たり前に意識してことが、今の時代は無視されるようになっている。
声をあげられない小さい人たちの声に耳を澄ます姿勢がなくなってしまったのが悲しい。
人生で最初に社会生活を送る場所が、庭がなくベランダもなく窓も少ない場所なんて、悲しいだろう。
保育園という場所は、こどもたちが1日7時間、8時間と過ごす場所だ。
「こどもたちが心地良く過ごせる」ことの大切さを忘れてはいまいか。
待機児童がひと段落したのだから、これからは、園舎を含めて保育園の質をどうしたらいいか、考える時期に来ている。