境界知能と浮きこぼれ~対面型一斉授業は限界だ

ここ数年、境界知能の話題がよく取り上げられる。

境界知能=「IQが70-85の人」のことをいうそうだ。

言うまでもなく、IQが高いほど知能が高く、IQが低いほど知能が低い。

平均の人がIQ100である。

 

人口の約14%が境界知能

人口の約14%が境界知能だそうだ。

つまり「人間が100人いれば、そのうち14人が境界知能」なのである。

30人のクラスに5人いる計算だ。

境界知能の人はあんがい多いのだ。

少年院に入る触法少年にも境界知能が多いといわれている。

 

平均IQは国によって異なる

国民の平均IQは国によって違う。

このことは、橘玲著『もっと言ってはいけない』でも取り上げられている((読書感想)もっと言ってはいけない(著者:橘玲)(その2)東アジア人のIQと性格)。

東アジアの国々の国民平均IQは総じて高い。

国民平均IQのトップ10には東アジアの国々が多く並んでいる。

アメリカの名門大学で東アジアにルーツを持つ学生の比率が高いのはよく知られた話である。

なかでも日本は、世界でも有数の高IQ国である。

一方、IQは環境にも影響されるようで、農業国は総じて工業国よりも平均IQが低い。

つまり「教育が整っていれば国民平均IQが上がる」ということである。

Countries by IQ - Average IQ by Country 2023

境界知能がIQ70-85とされるが、国民の平均IQが85前後という国もたくさんある。

日本では「境界知能」とされて「支援が必要」だといわれる人は、ほかの外国では平均的なIQの範囲内に入る。

日本で「境界知能」といわれている人でも、ほかの国に行けば平均的なIQの範囲内なのだ。

 

「浮きこぼれ」は境界知能と同じくらいの割合で存在する

正規分布からわかるように、平均より低知能の人(境界知能IQ70-85)が人口の14%程度いることは、平均より高知能の人(IQ115-130)も人口の14%程度いる、ということだ。

高知能「IQが115超の人」はいわゆる「浮きこぼれ」に相当する。

でも、日本の学校システムでは今のところ「浮きこぼれのこどもたちをなんとかしよう」という方向には進んでいない。

ギフテッドをどうにかしよう、という話は出ているが、この「ギフテッド」をどう定義するのかがまた難しい。

 

もはや対面型一斉授業は限界

ベストセラー『ケーキが切れない少年たち』の著者は「境界知能の人への支援が見過ごされてきた」・「境界知能のこどもたちへの支援が必要」と訴える。

境界知能の子どもへの支援といっても、今の学校システムでは、学校現場で知能検査がいま以上に進み、境界知能だと認定された子どもを早い時期から分離して別の学級(支援級)に送り込むのが加速するだけではないのか。

また、幼児・児童期のIQは流動的で成長とともに変わることも多いといわれている。『ケーキが切れない少年たち』でもその点に言及がある。早い段階で境界知能と認定されても、成長とともにIQが大きく伸びるケースもあるだろう。

それに加えて、今の深刻な教師不足の状況では、支援級を増やそうと思っても教員が圧倒的に足りない。そもそも、深刻な教師不足を招いた原因のひとつが、支援級の増加により必要な教員数が増えたことだといわれている。

幅広い学力のこどもたち各々に適した教育を提供するには、今のような対面型一斉授業ではとうてい無理だ。

今の学校システムを根底から覆すしか、すでに崩壊している公教育を救う方法はないと思う。

生徒10~15人に教師1人をつけて個々のペースで学習するほうが、境界知能のこどもたち・浮きこぼれのこどもたちの双方が勉強しやすくなるのに…と思う。