(読書感想)先生が足りない(著者:氏岡真弓)
次男を公立小に通わせているが、教員不足が深刻だと感じることが多い。
年度途中に病欠で長期休業する教員が出ると、代わりの教員がなかなか見つからないのだ。
『なぜ教員不足がここまで深刻化したのだろう』
そういう思いから私は本書を手に取った。
先生が足りない(氏岡真弓)
本書の著者は、朝日新聞の編集委員である氏岡真弓氏。
本書には、今日の教員不足に至るまでの過程と教員不足の原因が詳しく書かれている。
「教員不足の深刻化により、公教育が維持できなくなりつつある」という危機感が本書から伝わってくる。
本書は、現在の公教育の現状を知りたい人におすすめである。
正規教員の雇い控え・非正規教員への依存
本書を読んで、教員不足の原因は「正規教員の雇い控えと非正規教員への依存」だと理解した。
つまり、教師不足は、
団塊ジュニア世代を教えるために採用したベテラン教員の人数が多く、教員の年齢構成のいびつさを解消するため、正規教員を雇い控えて、その分を非正規教員で埋め合わせる時期が長く続いた。
のが大きな原因のようだ。
これに加えて、
・ベテラン教員が一斉退職する時期に入っていること
・若い教員の産休・育休の増加
・学校現場の多忙化による教員の病欠の増加
・特別支援学級の増加
・教員志望者数の減少
が輪をかけて事態を悪化させた。
私事で恐縮だが、10年ほど前にたまたま公立小を見学したとき、学校現場が若い先生ばかりであることに驚いた。
「これでは10年後に産休・育休をとる人が続出して学校現場は回らなくなるだろう…」と思っていたら案の定、そうなった。
役所は、将来の産休・育休者の増加について「非正規教員で補える」としか思っていなかったのだろう。リスク管理が甘い。
言うまでもなく、産休・育休は当然の権利だし、教員は激務なので育休をしっかりとってから復帰したほうが親子とも負担は少なくてよいと私は思う。
教員不足のせいで産休に入るのも気が引けるような状態になってしまっている。
本書でもう少し踏み込んでほしかったこと
教員の多忙化~学習指導要領の改訂による影響
2020年に学習指導要領が改訂されて、ICT教育・英語必修化(小学校)・プログラミング教育などが新たに盛り込まれた。
このことが教員の多忙化に拍車をかけていると、次男が通う公立小を見ていて感じる。
ICT教育に教員が時間をとられるため、こどもたちの読み書き計算の定着がおろそかになっている感すらある。
けれども、学習指要要領の改訂による影響については本書には具体的に言及されていない。それが残念だ。
朝日新聞という立場上、文科省のカリキュラムについての見解を載せるのが難しいのだろうか。
特別支援学級の増加について
本書のあとがきのなかで「特別支援教育の深刻さをわかりながら、どこか特別なものとして通り過ぎてしまった」と著者は述べている。
特別支援学級の現状と在り方については別途、しっかりと調査して報道してほしいと思う。
とはいえ、
・非正規教員の不足のなかで、特別支援学級が最も深刻であること
・専門的なスキルが必要な特別支援学級について正規教員が担当する機会が少ない(学級数が定まらずクラス編成が流動的であるため)
と本書で明記している点は評価したい。
本書の記載から、学校に特別支援教育がなかなか根付かない原因のひとつは、短期採用の非正規教員が特別支援学級を担当することが常態化していて特別支援教育のスキルが学校現場に定着しにくいからだとわかった。
先生が足りない(著者:氏岡真弓)