極私的、良いリトミック教室を見分けるポイントとは?
最近は、巷の音楽教室ではどこでもリトミックのレッスンを開講している。
リトミックをやっていない音楽教室を見つけるほうが難しいと思うほどだ。
音楽教室のウェブサイトも最近は素敵なものも多い。
「若くて可愛らしい音大卒の先生が、綺麗なドレスを着て写っている」写真が掲載されていたりする。
一見して華やかなイメージに結構だまされがちである。
まあ、「育児の息抜きのため」とか「ママ友を作る場のため」にリトミックに通うのならば、リトミックのレッスンの質はそれほど気にしなくていい。
楽しめればそれで十分。「息抜き」そして「ママ友づくり」-それはそれで大切だ。
でも「できるだけ良質なリトミック教室を見つけたい」のであれば、複数のリトミック教室を見学&体験することをお勧めする。
リトミック教室のレッスン料の相場(都内の場合)
この記事を書くにあたって、リトミック教室のレッスン料をおおまかに調べてみた。
どうやら、リトミック教室というのは、年間を通して月3回というのが標準で、東京都内ではレッスン料(幼児の場合)は月7,000円~9,000円の価格帯が一番多いようだ(2019年現在)。
これより安いレッスン料の教室もある。
けれどもよく調べてみると、実際はリトミックの授業が月2回だったりする。
その点は注意が必要だ。
なお、レッスンでCDをかけて子どもたちが踊るような、リトミックとは呼べない教室のレッスン料はもっと安いかもしれない。でも、ここではそのような教室はリトミック教室から除外して考えている。
今回、しょっぱなから、なぜレッスン料に言及したかというと「リトミックのレッスンは、先生の経歴によって値段にそれほど大きな差はない」ということを言いたかったからだ。
これは結構、驚くべきことだ。
ふつうは、音大に入りたければ高名な先生についてレッスンしてもらうのが普通だが、高名な先生のレッスン料は驚くほど高額だと聞く。
リトミックのレッスン料に関しては、大した経歴がない人でもそれなりのレッスン料を提示している人も多い(正直に言う)。
そうならば、できるだけ優れた先生にリトミックのレッスンを受けたほうがお得ではなかろうか?
ここでは、子どもをリトミック専門の教室に通わせている音楽素人である私が独断と偏見で勝手に選ぶ、極私的「良いリトミック教室を選ぶときのポイント」について説明する。
リトミック教室を選ぶ際のポイントその1:「リトミック専門の教室であること」
最近では、リトミックは、ピアノ等の楽器レッスンが主体の音楽教室でも行われている。
リトミックを楽器演奏の導入としてレッスンに取り入れている音楽教室は多い。
ピアノの先生でも、音大生の頃にリトミックの授業を受けたことがある人も多いからだ。
今回、私がおススメするのは「リトミック専門の教室を選ぶこと」である。
もちろん、リトミック専門の教室でもピアノ等の楽器を教えていることもあるが、楽器のレッスンはサブで、メインはあくまでリトミックである教室を選ぶことが大切だ。
リトミック教室を選ぶ際のポイントその2:「ダルクローズ国際免許を持つ先生に習うこと」
ダルクローズとは
リトミックは知っていても、「ダルクローズ」を知らない人も多いかもしれない。
「ダルクローズ」とは「エミール・ジャック=ダルクローズ」という音楽家のことだ。
リトミックの生みの親である。
ちなみに、アメリカでは、日本でリトミックと呼ばれているものを「ダルクローズ・メソッド」と呼ぶらしい。
長男はダルクローズ国際免許を持っている先生方にリトミックを習っていた。
ダルクローズ国際免許とは、ダルクローズ自身が創設した、リトミックを指導するための免許のことであり、現在はエミール・ジャック=ダルクローズのお弟子さん・孫弟子さんたちによって運営されている団体(日本ジャック=ダルクローズ協会)が発行している。
国際免許が増えない理由
このダルクローズ国際免許は、音楽的バックグラウンドがある人でも取得するのが難しく、免許取得までに努力・時間・お金が相当にかかるといわれている。
実際、ダルクローズ国際免許は日本では、ディプロマ・ライセンス・サーティフィケート・エレメンタリーという段階がある。
日本では、ダルクローズ国際免許を持っている人はディプロマで5人、ライセンスでも25人ほどしかいない(2019年現在)。
教則本を禁じている、らしい
長男が通っている教室で、ダルクローズ国際免許を持っている先生に聞いたところ、エミール・ジャック=ダルクローズという人はリトミックの指導書を発行するのを禁じていて、リトミックの指導は師匠から弟子へと生で伝承することを信条としたそうである。
そのせいで、ダルクローズ国際免許の取得には時間・費用・労力がかかるのだ。
「自分自身で感じる経験を積み重ねていくこと」を最も大切にしているリトミックの創始者ならではの考えだ。
この考え方(師匠から弟子への直接的な伝承)が頑なに守られているからこそ、ダルクローズ国際免許の価値が維持されていると思う。
その一方で、免許取得の難しさがダルクローズ国際免許を持っている人がなかなか増えない要因である。
国際免許を持っている先生は少ない
それもあってか、日本にはリトミックを指導する方々で構成される団体がいくつもある。
もちろん、国際免許を持っていなくても素晴らしい先生はたくさんいる。
国際免許を取得した指導力がある先生と子どもとの相性が合わないけど、国際免許を持っていない先生のほうが相性が良い場合だってある。
それに、苦労してダルクローズ国際免許を取得したからといって、リトミック教室をずっと運営できるとも限らない。
今は「英語リトミック」のような、一見、目新しいものに生徒が流れていく傾向があるからだ。
きちんとした先生にリトミックを習ったうえで英語を別に習ったほうが、音楽的素養と英語どちらもはるかに上達するしお金の無駄にならないと思うのだが。
それにしても、儲け優先でリトミックもどきの教室が乱立している最近の日本と違って、儲け主義に走ることを頑なに拒み、免許の価値の維持に努めているヨーロッパの音楽人の理念には感服する。
ダルクローズメソッドとは
ダルクローズメソッドは、リトミック・ソルフェージュ・即興演奏の3要素からなる。
長男のリトミックのレッスンを見ていると、先生方は子どもたちの動きを見ながら即興でピアノを演奏する。
ダルクローズリトミックのレッスンの場は常に「即興」だ。
たとえば、雨が降っている様子を表現するときは「雨の音」、風が吹いている様子を表現するときは「風の音」をピアノで表現する表現力に脱帽する。
ダルクローズ国際免許を持つ先生方のピアノの表現力は素晴らしすぎる。
これを知らずしてリトミックを語れない。心からそう思う。
是非、ダルクローズ国際免許を持つ先生方のリトミック教室を見学してみてほしい。
音楽家は音で表現するのがお仕事だから、言葉で説明するよりも音で説明するのが得意な人たちである。
だから、ダルクローズメソッドの素晴らしさを語るウェブサイトはそう多くない。
そこで今回、わが子がダルクローズ国際免許を持つ先生方からリトミックの指導を受けている私が、この場で勝手にダルクローズメソッドの素晴らしさを語ろうと思った次第だ。
「ダルクローズ国際免許」「リトミック」「教室」で検索すれば、ダルクローズ国際免許を持つ先生方のリトミック教室が見つかるはずである。
日本ジャック=ダルクローズ協会のウェブサイトにも、ダルクローズ国際免許を持つ先生方のお名前が掲載されている。
現状ダルクローズ国際免許をお持ちの先生方の数は少ないとはいえ、年々、少しずつ増えてきている。
首都圏であれば、ダルクローズ国際免許をお持ちの先生がお住いの近くにかならず見つかるはず。
せっかくリトミックを習うのならば、優れた表現力の即興演奏を子どもたちに毎回聴かせる実力がある先生方に習ったほうが、音楽面からも料金面からもお得だ。