投資先としての保育園

日本の介護が「刑務所ビジネス」で破壊される日――内田樹×堤未果、日本の資産が世界中のグローバル企業に売り渡される“ハゲタカ”問題を考える(1)介護ビジネス編を読んだ。

上記の記事で、堤氏は介護分野は5つ星の投資商品」だと述べている。

老人ホームでは、利用者である高齢者は加齢でおおよそ5年ほどで亡くなるから、次から次へと利用者が途絶えることはない。
それゆえ老人ホームは回転率と稼働率が高い、優良な投資先とのことだ。

 

株式会社保育園

高い回転率と稼働率

上記の記事を読んで、老人ホームはそのまま保育園と同じだと思った。

保育園の利用者=子どもは0歳児で入園しても6年経つと必ず卒園していくし、待機児童が多い地域に限れば、稼働率(認可の場合)は100%に近い。

加えて、認可保育園は補助金(=つまり税金)で運用されているから、運営者はとりっぱぐれがない。
株式会社保育園で保育士の人件費を低いままに抑えれば、十分な配当を出すことも可能だ。

ご存じない方もいるだろうから説明するが、日本では、以前は株式会社が認可保育園を運営することはできなかった
詳しく言うと、以前は、認可保育園の運営は自治体か社会福祉法人しか認められていなかった。

それが2000年に法律が改正され、株式会社でも認可保育園の運営ができるようになった
これ以降、株式会社保育園の数は年々増加する一方である。

株式会社保育園のメリットとして、企業が運営しているため公立保育園よりも柔軟なカリキュラムが提供されることや、保護者の目線に立った保育サービスが提供できることがよく挙げられている。

けれども、保育内容うんぬんよりも株式会社保育園はそもそも投資先として優れているのだ。
「介護施設が投資先として優れている」のと同じだ。

補助金をもらいつつ保育士の賃金を低いままにすれば、株主に高い配当を出すことができるのだ。

 

大手株式会社保育園のウェブサイト

最近は、保育士不足の原因のひとつとして保育士の賃金の安さがたびたび報道されているため、ご存知の方も多いと思う。

国が保育士の待遇改善よりも幼保無償化を優先するのは、保育士の待遇改善のために賃金を上げると保育園の運営が厳しくなるからではないだろう。

保育園の質の向上よりも「保育園」という新たなビジネスを確立するほうが国にとって重要なのかもしれない。

上場した大手株式会社保育園のウェブサイトをみると、「投資家情報」というサイトがあるのが分かる。

上場するような大きな株式会社保育園ともなれば、保育園の利用者である保護者向けにアピールするだけでなく、出資者である投資家に向けたアピールが必要なのだ。

投資家からすれば、保育園の収入は補助金(つまり税金)で支えられているため、大化けする業種ではないけれど、安定した投資先であることは間違いないだろう。

 

個人的には

保育園をめぐってここ20年間で仕掛けられた仕組みを知ってしまったので、株式会社保育園に子どもを預ける気には到底なれない

もちろん、株式会社保育園で働いている保育士さん一人一人を批判している訳では決してない。

保育園業界を取り巻く新たな仕組みがまずいのだ。
子どもや保護者のための仕組みではなくて、実は他の誰かがお金儲けできるような仕組みがまずいのだ。

少子高齢化社会で教育や福祉にかけるお金がないから民営化すると建前は言いつつ、実際は他の誰かが儲けるための仕組みになってしまっている。

おかげで最近は保育園も学校も塾も大手資本が設立したところに通おうと思わなくなった。

教育は「個人対個人」が基本。

経営者(=運営者)の顔が見えるところに子どもをお願いしたい