(読書感想)消えたお妃候補たちはいま(著者:小田桐誠)
天皇陛下が皇太子時代、
お妃候補としてたくさんの女性の名前が挙がっていたことを、
今の若い世代の人たちは知らない人も多いだろう。
この本「消えたお妃候補たちはいま」は、
著者による1993年発行の「消えたお妃候補たち(宝島社)」という本をベースに、
天皇陛下のお妃候補とされた方々がその後どうなったかを加筆した本だ。
「消えたお妃候補たち」を読んだことがなかった私は、
この本を読んで初めて知ったことも多い。
表紙には皇后陛下の若い頃のお写真が使用されている。
皇后陛下についてのご成婚後についても多く触れられている。
当時見かけたお妃候補の名前がこの本には列挙されている。
表紙にも「有力候補者リスト全70名追跡調査」と書かれていて、
すべでの候補者ではないものの、多くの候補者の現在が書かれている。
かつての候補者の方々は一般人として生活しているので、
今どういう暮らしをしているのかを本から抜粋するのは避けるが、
候補者の中には今も独身の方もいるし、離婚を経験された方もいる。
上皇陛下:「お妃は旧皇族・華族出身以外」という意思
この本を読んで、
上皇陛下は学習院高等科在籍時から
「お妃は旧皇族・華族出身者以外から選びたい」と明言していたことを
私は初めて知った。
上皇陛下は当時から「開かれた皇室」を目指していたことがよく分かる。
天皇陛下(浩宮)もお妃選びについては、
上皇陛下の意向(お妃は旧皇族・華族以外から)を尊重していた。
そんな状況にあっても、旧皇族・華族をお妃候補に推す「保守派」が宮内庁に存在していたそうだ。
一方で、この本には、
上皇后陛下はお妃候補のひとりとして久邇晃子さんを強力に推していた、とある。
この本には明記されていないが、
お妃候補として久邇晃子さんの名前が最後まで消えなかったのは、
久邇晃子さんの温厚で控えめな性格が皇室向きだと上皇后陛下は評価していたのではないか。
久邇晃子さんは学習院大学を卒業しているが、
オックスフォード大学で哲学を専攻しており、
天皇陛下が雅子妃殿下と結婚した後に、東京大学理科II類に入り直し、
理科II類から医学部医学科に進学して(理科II類からの医学部医学科進学は難関)、
精神科医になっている。
東日本大震災の後、原発に対する国の方針について、
久邇晃子さんが異議を唱える原稿を掲載したことについても、
この本で触れられている。
さまざまな団体がお妃選びに関与
天皇陛下(浩宮)のお妃選びに際して、
・菊栄親睦会(皇族・旧皇族)
・常磐会(学習院女子部の同窓会)
・霞会(旧皇族・旧華族)
・学習院関係者
から始まり、聖心ルート・経済界ルート・外務省ルートと、
お妃選びの範囲がだんだんと拡大していった経緯がこの本には書かれている。
いずれにせよ、天皇陛下のお妃候補については、
少なくとも三代前の親戚まで宮内庁は徹底的に調べたようだ。
浩宮の結婚相手を昭和天皇に見せてあげたい
この本を読んで初めて知ったのは、
昭和天皇の闘病中、
上皇陛下(当時は皇太子)が「昭和天皇がお元気なうちに浩宮の結婚相手を昭和天皇に見せてあげたいという激情に駆られていた」
ということ。
何としても浩宮の結婚相手を見つけなければと思い立った上皇陛下が自ら動いて、
ご学友の明石元紹の長女をお妃候補として御所に招いたりしたが、
明石元紹の祖父が陸軍大将で、
朝鮮総督府刑務部長や台湾総督を歴任した人物であったため、
東南アジア諸国を刺激するとして結婚話が流れた?らしい。
この本にも書かれているように、
旧皇族・華族出身で陸軍に進んだ人はたくさんいるわけで、
パーフェクトな結婚相手というのはそうそう見つからないものである。
この本によると、
天皇陛下のお妃選びは、天皇陛下が学習院大学に入学したと同時に始まったそうである。
あと数年もすれば、悠仁さまは大学に入学する。
上皇陛下・天皇陛下のお妃選びの際は世間も「開かれた皇室」を支持していた。
けれども、
眞子さん結婚までの大騒動を見て、
皇室は開かれ過ぎてしまったと感じている国民も今は多いと思う。
今は旧皇族・華族出身のお妃のほうが、国民にとっては新鮮に映るかもしれない。
消えたお妃候補たちはいま
著者: 小田桐誠
初版: 2019年
出版元:KKベストセラーズ