(読書感想)楯(著者:二谷友里恵)

最近、郷ひろみ(以下、登場人物は敬称略)が立て続けにテレビ番組に出演していた。

郷ひろみといえば…二谷友里恵の本「楯」を思い出した。

二谷友里恵は郷ひろみの最初の妻である。

別れた夫の話題によって昔書いた本を掘り起こされてしまうのは二谷友里恵には少し気の毒だ。

 

二谷友里恵の「楯」

「楯」は2001年に出版された。

この本が出版されてから20年が経つ。

わたしは確か「楯」が初版された頃に「楯」を読んだはずだ。

けれども内容はほとんど覚えていない。

子どもを持つ身になってからあらためて「楯」を読んでみると、著者である二谷友里恵の気持ちが分かる箇所が随所にあった。

 

郷ひろみと二谷友里恵の披露宴

郷ひろみが二谷友里恵と結婚した年はバブルの絶頂期だった1987年。

彼らの結婚披露宴はテレビ番組の特番として大々的に放映され、驚異的な視聴率を記録した。

二谷友里恵は郷ひろみと離婚した後で芸能界から身を引き、家庭教師のトライグループの創立者と再婚し、2021年現在は社長を務めている。

「楯」に書かれているように、郷ひろみが二谷友里恵と離婚した後、二谷友里恵はしばらく沈黙を守っていた。

けれども、事実と大きく異なる報道に対して二谷友里恵が反論をしないことについて長女が二谷友里恵に異を唱えたことが、二谷友里恵が「楯」を出版したきっかけである。

 

大スターとの結婚生活の難しさ

「楯」には、郷ひろみという稀代の大スターと結婚生活を続けることの難しさが描かれている。

 

周りがすべてお膳立て

「楯」では郷ひろみが、

・浮気のセッティングや後処理までマネージャー任せ

・手あたり次第に女性に手を付ける

など、まるで王様ごときの日常生活がさりげなく描かれている。

10代の頃からこういう生活を続けているのだろうから、こういう習慣はなかなか変えられないだろう。

 

郷ひろみの「高いプロ意識」

その一方で郷ひろみが、

・他人に見られていることを常に意識して容姿に気を遣う


・仕事の時間にきわめて厳格

というような、郷ひろみのプロ意識の高さも書かれている。

郷ひろみほどの大スターと結婚するならば、一般的な日常生活を送ることはあきらめざるを得ない。

夫は大スターだからと割り切り、夫の行状に目をつぶったまま結婚生活を続ける選択をする妻もいるだろう。

けれども「楯」を読む限り、二谷友里恵とその娘たち(特に長女)は潔癖で一本気な人たちだ。

潔癖であるがゆえに、郷ひろみの行状を黙って見過ごすことができなかったのがよく分かる。

 

娘のお受験

「楯」を読むと、二谷友里恵が次女のお受験終了を待って郷ひろみの離婚を決めたこと、そして、次女のお受験準備のため自身の精神の安定を保つのに神経を遣っていたことがひしひしと伝わってくる。

次女がお受験によるプレッシャーに押し潰されないよう、二谷友里恵がいろいろと手を尽くしていたのがわかる。

たとえば、受験する小学校の校長先生からの手紙だと偽って、試験を受ける次女を勇気づける文面の手紙をポストに投函する仕掛けをするなど。

小学校受験を突破するためにはそこまでしなければならないのか、と考えさせられる。

でも、まだ小さい子どもが「受験」という緊張する場に出るのだ。

それくらいのことはするのが常識なのかもしれない。

二谷友里恵は、それが当たり前であるかのように娘の小学校受験の準備をする。

彼女の頭の中には「公立小学校」という選択肢はないようだ。

二谷友里恵自身、娘たちと同じ一貫校に在籍していたことからすれば、娘たちの小学校受験は二谷友里恵にとっては当然「乗り越えるべき壁」なのだろう。

 

娘を自身の宣伝に利用した疑惑

「楯」では、郷ひろみが当時、次女が日舞発表会で踊っている写真をスポーツ新聞に掲載させ、自身の宣伝に利用しようとした可能性について二谷友里恵は批判する。

今ならば、セキュリティーの観点から芸能人は子どもの写真を安易に新聞に掲載させたりはしない。

けれども20年ほど前は個人情報保護という概念がなかった。

「楯」が出版されたのち娘たちが成人するまで、そして成人した後の今でも、娘たちの写真が公になることは一切ないのは事実だ。

そういう意味でこの本「楯」の出版は、実際に娘たちを守る「楯」として機能したのだろう。

 


著者: 二谷友里恵
初版: 2001年
出版元:文藝春秋

 

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