(読書感想)愛し続ける私(著者:十朱幸代)

この本は、女優・十朱幸代(以下敬称略)が76歳のときに出版された自伝である。

十朱幸代の幼少の頃・少女時代の写真がいくつか挿絵として使われている。

それらの写真の、光り輝く濡れた大きな黒目がなんともいえないほど魅力的なのだ。

さすが将来女優になる少女は「何か持っている」のだ。

 

NHKドラマ「バス通り裏」でデビュー

十朱幸代は俳優・十朱久雄の長女として生まれた。

幼少時は奈良で過ごし、女優中村メイコとも親交があったそうだ。

父親が俳優をしていた関係で、4歳の頃に誰かのピンチヒッターで子役として舞台に立った時、お客様から大きな反響があったことが女優を志したきっかけだという。

小さい頃からお芝居をやるのが好きで、小さい頃から「大きくなったら女優になる」と明言したとのこと。

 

20代のはじめに7LDKの家を建てる

驚いたのが、20代のはじめに目黒区内に7LDKの3階建ての一軒家を建てたということ。

この本にも、当時新築の素敵なお家の前で父母と一緒に撮った写真が掲載されている。

ドラマ『バス通り裏』の大ヒットで売れっ子女優になったとはいえ、この時代に20代はじめで家を建てるなんて、昔のスタア女優は思い切りが良いというか、格が違う。

 

数々の超大物スタアと共演

十朱幸代は、長い女優人生でたくさんの超大物スタアと共演してきた。

たとえば、中村錦之助・石原裕次郎・高倉健・緒形拳・杉村春子・山田五十鈴など。

なかでも中村錦之助は、登場すると現場が急に明るくなるようなオーラがあったという話や、石原裕次郎は現場の誰からも愛され、裏表がない気持ちが良い性格の持ち主だったという話が印象的だ。

中村錦之助も石原裕次郎も、わたしが物心つく頃には中年のお腹が出たおじさんになっていた。

彼らの若い頃の眩しすぎるほどのオーラをリアルタイムで感じることができなかったのはとても残念だ。

 

恋の話

この本には、恋のお相手については小坂一也以外、実名は書かれていない。

小坂一也とは17歳で知り合い、十朱幸代が32歳になるまで結婚せずに家族とも同居していたとのこと。

人生で一番美しい頃を一緒に過ごしたのに別れることになった無念さがこの本にも綴られている。

しかし、その後、十朱幸代は多くの恋を経験したようだ。

実名は書かれていないけれども、ある有名男性歌手とお相手とは結婚寸前まで行ったのに、双方の家族の反対で破局したと書かれている。

その有名男性歌手とは、数年前にお亡くなりになった、昔ワイドショーで十朱幸代の交際相手だと騒がれた大物男性歌手のことだろう。

十朱幸代のほうが彼よりずっと年上だったのが結婚の障害になったそうだ。

この本には、お相手とされる某有名男性歌手の性格の良さ、たとえば向上心がある・人の意見に耳を傾ける謙虚さを持っていることが書かれている。

 

女優という職業

それにしても、十朱幸代に限らず、この時代の大物女優さんたちは、女優という職業を大切にしているというか、恋愛や結婚・出産というものをきっぱりと捨てて女優を選ぶ潔さがあることに驚く。

きっと当時は彼女たちなりに恋愛か仕事か、家庭か仕事かで葛藤があっただろう。

それでも何か一本筋が通っているというか。

女優という職業を選ぶことへの思い切りの良さが清々しく感じられる。

 

愛し続ける私

著者: 十朱幸代
初版: 2018年10月10日
発行元:集英社

 

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