(読書感想)便利な保育園が奪う一番大切なもの(著者:長田安司)

読書感想「便利な保育園が奪う一番大切なもの」

著者:長田安司
出版年:2013年
出版社:幻冬舎ルネッサンス

本書の著者は、東京都八王子市の保育園の理事長である長田安司氏である。

この本が出版されてからもうすぐ10年が経とうとしている。

この本の著者は、
日本の保育施策が近年、経済施策・雇用対策に影響されて決定されてきたこと、
長時間保育が子どもに与える弊害、そして、
親の利便性ばかり追求する保育の姿勢に疑問を呈する。

 

近年の保育施策について

この本で著者は、
日本の近年の保育施策が、経済学者中心に決定されてきたと述べる。

こどもの健全な発達より、
経済を回すことに重きが置かれてきたのだ。

日本の保育園というのは、
先進国の中では群を抜く長時間保育だそうだ。

本来はこどもの発達を保障することが
最優先であるべきなのに、
人手不足を解消するための女性の労働力活用が
最優先にされてきた。

子どもの健全な育ちよりも、
保育園で長時間子どもを預かることを優先させれば、
小学校が荒れ、学級崩壊が起こると著者は警告する。

そして、この本の出版からもうすぐ10年が経つが、
小学校はどうなったかというと、
不登校児童は年々増加の一途を辿っている。

保育園の質の低下が直ちに、
小学校での学級崩壊や不登校児の増加につながるとは
いえないだろう。

けれども、
待機児童対策として保育園の数が急増し始めた時期と、
小学校での不登校児の増加の割合が増え始めた時期とは
重なるのではないだろうか。

 

長時間保育の弊害

この本が最初に出版された当時、
長時間保育に警鐘を鳴らす本はほとんどなかったし、
残念ながら今も少ない。

子どもの発達において乳幼児期は非常に大切であるのに、
未だ、保育園にこどもを預けることばかり話題になり、
こどもが置き去りになっている。

医療従事者の方々など、
コロナ禍で長時間働かなければならない人や、
生活上やむを得ず長時間働かざるを得ない人は、
こどもを長時間預けるのは致し方ないだろう。

そういった人々を除いても、
日本の企業はいまだに常勤7時間以上の長時間勤務である。
それに伴い、多くのこどもたちが保育園で8時間以上を過ごすという
長時間保育が常態化している。

わたしはこの本をきっかけに、長時間勤務のお勤めを止めた。

お勤めを止めて振り返ってみると、
日本企業の労働時間がいかに長いかを実感する。

わたしは今は在宅勤務をしている。
こどもが高校に入学するまでは、在宅勤務か短時間勤務の仕事をするつもりだ。

わたしは、
次世代の若い人たちには、
かつての自分と同じように、
保育園にこどもを預けて長時間働くライフスタイルを継承してほしくない。

それではあまりにも子どもの心が置き去りだ。

子育ては長い。
保育園を卒園しても中学卒業までは9年もある。

この国は母親を働かせて、
子守を保育園や学童保育に任せようとしている。

けれども、もっと別の働き方を選ぶ選択肢があっていいはずだ。