(読書感想)昭和天皇 最後の侍従日記(著者:小林忍+共同通信取材班)その1

「昭和天皇 最後の侍従日記」ー華族出身以外の侍従による日記

「昭和天皇 最後の侍従日記」は、
昭和天皇の侍従だった小林忍氏の日記(昭和49年~平成13年)を編纂したものである。

小林侍従は、昭和天皇の侍従に就任した昭和49年から昭和天皇の崩御まで昭和天皇に仕え、
その後は、香淳皇后の御用掛を務め、平成13年に退職した。

昭和天皇のお写真には、入江侍従の横で控えめに立っている小林侍従がよく写っている。

この本にある小林侍従の日記は1日数行のメモ的なもので、
その日起きた事実が簡潔に記載されている。
時には小林氏の短い感想が添えられているのが興味深い。

この本の後書きにあるように、
小林侍従は華族出身ではなく、人事院の役員として採用された人なので、
華族出の侍従のような戦前の天皇観を持つ人ではない。

けれども、
その日に起きたことが淡々と述べられている中に時折混じる短い感想から、
小林侍従が昭和天皇を尊敬し臣下として忠実に仕えていることがわかる。

 

晩年の昭和天皇・香淳皇后の暮らしぶりが垣間見える本

この本の歴史的価値については多くの方々が取り上げている。

特に、昭和天皇が病に倒れ崩御するまでの連日の緊迫した様子が
この日記の短い文章から伝わってくる。

わたしがこの本で最も印象に残ったのは、
昭和天皇と香淳皇后の晩年のご様子である。

昭和天皇は晩年、
妻である香淳皇后の認知症、
弟である高松宮の逝去、
長年仕えた入江・徳川両侍従の退任が続いた。
入江侍従に至っては退職直前に急逝している。

特に昭和60年(香淳皇后82歳)以降の小林侍従の日記には
香淳皇后に関する記載がパタリとなくなる。

この頃には香淳皇后との意思疎通が難しくなり、
昭和天皇は香淳皇后と別々に過ごすようになったと思われる。

昭和天皇は病気で倒れる直前まで、天皇としての公務を続けられてきた。

そんな中で、
本音を話せる親しい家族が周りからいなくなり、
長年仕えていた侍従は退職したりと、
昭和天皇の晩年はつらいことが多かったのではないかと推察する。

昭和天皇の最晩年の数年間は御病気が続いた。
最晩年の昭和天皇のご様子からは、
昭和天皇の孤独感が伝わってきて、非常にせつない気持ちになった。

 

昭和天皇 最後の侍従日記


著者:小林忍+共同通信取材班
初版:2019年
発行:文藝春秋

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