(読書感想)ショーケン(著者:萩原健一)

昨日、ショーケン(萩原健一)の訃報を見て驚いた。

享年68歳。

早すぎる。

 

私は「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」「太陽にほえろ!」など…テレビドラマで活躍するショーケンの姿をリアルタイムで見ていた世代ではない。

 

私が子どもの頃、ショーケンはワイドショーを賑わす芸能人のひとりだった。

ちょうどその頃、大麻不法所持での逮捕、いしだあゆみとの離婚騒動で、毎日のようにテレビのワイドショーを賑わせていたからだ。

その頃の私にとってはショーケン=俳優という印象でなくて、「ワイドショーによく出てくる人」という印象だった。

あの頃の芸能レポーターが容赦なく芸能人に鋭い質問をしていたこと、そして、ショーケンの逮捕に際し、いしだあゆみが報道陣に囲まれて謝っている姿をおぼろげに覚えている。

 

実は、私はショーケンが俳優として出演する映画やドラマをほとんど見たことがない。

大河ドラマで綱吉の役をやっていたのを少し見た程度である。

 

その一方で、ショーケンが歌う姿はテレビで見たことがある。

ショーケンが50代後半の頃だろうか、バンドのボーカルとして登場したショーケンは確か「愚か者」を歌っていたと思う。

喉の調子が悪かったのか声が全然出ておらず、何を歌っているのかまったく分からない状態だった。

 

読書感想『ショーケン』(講談社、2008年)

こんなふうに、俳優・ミュージシャンとしての「ショーケン」の印象は私にはほとんどない。

それにも関わらず、私は以前「ショーケン」という本を購入した。

 

この本「ショーケン」はショーケンの自叙伝、著者はもちろんショーケンである。

どんな活躍をしていたのか分からない俳優なのに気になって本を購入してしまったのは、ショーケンが持つ「人を惹きつける天性の才能」に私が引き寄せられたのかもしれない。

この本には、今まで付き合ってきた女性たちの話だけでなく、若かりし頃のショーケンがいた頃の芸能界の話、たとえば石原裕次郎との交流についても書かれていて、なかなか面白い本だった。

 

 

女性遍歴

ショーケンが付き合ってきた女性たちはみんな、美しくて華やかで魅力的な人たちである。

そんな魅力的な女性を惹きつけるショーケンとはどんな人物かを知りたかったというのも、本を購入した理由のひとつだ。

 

この本で取り上げられている女性たちは、江波杏子、小泉一十三、いしだあゆみ、倍賞美津子、前橋汀子(以上、敬称略)である。

魅力的な女性たちばかりである。

 

特に、最初の奥様だった小林一十三は当時、本当に美しくモダンな人だった。

なお、本書が書かれたのは現在の奥様と結婚する前だったので、現在の奥様の話は出て来ない。

女性たちのなかでも印象的だったのは、江波杏子と倍賞美津子についてである。

 

江波杏子との交際

江波杏子とショーケンが交際していたのはショーケンが20代前半の頃だったそうだ。

ショーケンと江波杏子は8歳も年齢が違うのに、若く魅力的なショーケンに江波杏子が惹かれたのだろうか。

 

そういえば、映画で岸恵子と共演したエピソードも興味深かった。

岸恵子から共演者としてご指名があったらしい。

ショーケンは母性本能をくすぐる人なのだ。

 

倍賞美津子との交際

ショーケンが倍賞美津子と交際していた頃は、倍賞美津子はまだアントニオ猪木と結婚していた。

倍賞美津子の娘さん(アントニオ猪木の長女)は年頃の娘だったこともあり、倍賞美津子の娘さんとショーケンとはあまりうまくいっていなかったようだ。

倍賞美津子と別れてからしばらくした後、孫(娘の子ども)が生まれたとの連絡が倍賞美津子からショーケンのもとにあり、ショーケンが倍賞美津子の娘さんに電話で祝福を伝えたことがこの本に書かれていた。

 

倍賞美津子の娘さんに出産のお祝いをショーケンが電話で伝えた際、倍賞美津子の娘さんはショーケンに、昔いろいろつらくあたったことを詫びたそうである。

 

ショーケンには、最初の奥様(小泉一十三)との間に娘が1人いる。

ショーケンの娘さんは最初の奥様が引き取って育てたらしい。

「離れて暮らす娘も同じような思いをさせているかもしれないと思うと、倍賞美津子の娘さんにきつくあたることはできなかった」と、ショーケンはこの本で述べている。

この辺のやさしさが、ショーケンの人を惹きつける魅力なのだろうか。

 

ショーケンの生い立ち

ショーケン自身、兄弟のうち自分ひとりだけ父親が違うと本書で告白している。

戦後、女手ひとつで4人の子どもを育てなければならない境遇にあったショーケンの母親を援助してくれた男性がいた。その男性と母親との間に出来た子どもがショーケンだと、ショーケンはこの本で述べる。

 

ショーケンは何度も結婚した。

けれども子どもは最初の奥様との間の娘さん1人だけなのは、ショーケン自身の境遇が影響しているのだろうか。

そうであるなら、やはり、この辺のやさしさが人を惹きつけるのかもしれない。

 

 

俳優としてのショーケン

ショーケンというと女性遍歴ばかり取り上げられる。

けれども、この本には俳優としてのショーケンの姿も克明に書かれている。

この本を読むと、俳優としては役作りに真摯に打ち込む人だったことがわかる。

 

歌では沢田研二にかなわない

この本の冒頭にグループサウンズ時代のことが書かれている。

「歌は沢田研二にかなわない」という正直な気持ちがこの本で語られている。

 

ショーケンと沢田研二を含む数名のアイドルたち(当時)が怖い人たちに拉致されて、酒場で歌うことを強要されたとき、沢田研二がきっぱりと断ったそうだ。

それを見て、沢田研二のことを度胸がある奴だと思ったというエピソードには笑った。

 

その後、歌ではやっていくのは難しいと判断して、ショーケンはミュージシャンから俳優に転向した。

ドラマ「太陽にほえろ!」で主題歌とドラマのタイアップを提案したり等、ショーケンは発想力に優れた人だったようだ。

ドラマ「太陽にほえろ!」での石原裕次郎、映画「乱」での黒澤明監督、大河ドラマ「元禄繚乱」での綱吉役についても本書で取り上げられている。

 

「元禄繚乱」での綱吉役は狂気あふれるものだった。

撮影当時、役にのめり込み過ぎて、狂気じみた精神状態が私生活でも抜けなかったという話が興味深かった。

まさに天才肌の俳優だ。

今はこういう滅茶苦茶な俳優さんが居なくなった。

寂しい限りである。

 

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