(読書感想)大人になってから読み返す「窓ぎわのトットちゃん」

前回は、こどもの読書感想文の題材としての「窓ぎわのトットちゃん」を取り上げた。

(読書感想文)題材に「窓ぎわのトットちゃん」を選ぶ

今回は、大人になってから読み返した「窓ぎわのトットちゃん」の感想について取り上げる。

 

40年ぶりに窓ぎわのトットちゃんを読み返す

「窓ぎわのトットちゃん」は1981年初版のベストセラーだ。

わたしが小学生のときに「窓ぎわのトットちゃん」はベストセラーになった。

当時「窓ぎわのトットちゃん」を自分で買って読んだのは前回触れた通りだ。

それから40年が過ぎた。

今年、実に40年ぶりに「窓ぎわのトットちゃん」を読み返した。

こどもの頃この本を読んだときには気づかなかったことに、たくさん気づいた。

そして…40年前とは違う今の世の中について思うことがあった。

小さい頃に読んだ本を改めて読み返してみるのはとても面白いことだ。

 

大正末期から戦前の世の中の豊かさ

今回「窓ぎわのトットちゃん」を読むと、トットちゃん一家がわりと豊かな暮らしをしていたことがわかる。

大正末期から戦前(第2次世界大戦前)までの世の中は、穏やかで慎ましいながら豊かだったように思える。

たとえば、トットちゃんは、

・ロッキーという大型犬(シェパード)を飼っている

・2階建てのお家に住んでいて、2階にトットちゃん専用の子ども部屋がある

・創作ダンスを習っている

・小学生ながら定期券を使って電車通学をしている

・パパがヴァイオリニストなので、オーケストラを聞きに行く

というように、今から見ても文化的に豊かな生活を送っている。

トットちゃんはそれなりに裕福なお家の子どもであることがわかる。

もちろん、この時代のすべての家庭が裕福であるはずない。

けれども、当時の上流の家庭は、今とさほど変わらない生活を送っていたのがわかる。

一方で、この本では、戦争に向かって物資が少なくなっていく様子が描かれている。

たとえば…通学途中の駅にあるキャラメルの自動販売機でキャラメルを買うのをトットちゃんは楽しみにしていたのに、戦争でだんだん物資が少なくなり、キャラメルの売り切れが続く様子が描かれている。

逆に言うと、戦争が始まる前までは「自動販売機でキャラメルの小箱を買えるような」わりと近代的な生活を人々は送っていたことがわかる。

 

80年以上前にインクルーシブ教育を実践

そして、わたしが40年ぶりに「窓ぎわのトットちゃん」を読んで素晴らしいと思った点は、トモエ学園が80年以上も前からインクルーシブ教育を取り入れていたことだ。

トモエ学園に通っているうちに、「小さい頃からひとりひとり違っていて良い」ことを子どもたちは肌で感じていった。

校長先生はトモエ学園の運動会で、病気のせいで体の小さい高橋君が優位になるように、競技を高橋君向けにアレンジしていたかもしれないと、トットちゃんは振り返って思う。

校長先生は「頑張ればきっとできるようになる」というメッセージを、高橋君に送っていたのだろう。

一方で、現在はどうだろうか。

次男が通う幼稚園には支援が必要な子どもが在籍し、インクルーシブ教育が実践されている。

けれども、幼稚園に通う要支援のこどもたちの多くは幼稚園を卒園後、支援学級や支援学校に通う(もちろん普通学級に進学する子どももいる)。

今の日本の学校教育では、インクルーシブ教育は事実上、幼稚園でおしまい

もちろん、支援学校の支援の手厚さを評価して保護者が支援学校を選ぶという事情があるから、それ自体を否定するつもりは毛頭ない。

けれど、40年前ならば地域の小中学校の支援学級に通っていたであろう生徒が、今は支援学校に通っている。

少子化でこどもの数が減っているにも関わらず、日本では支援学校に通う子どもの数は増え続けている。

現在の日本の学校教育は事実上、インクルーシブ教育ならぬエクスクルーシブ教育になりつつある

この本の「あとがき」で黒柳徹子氏が述べているように、空襲でトモエ学園が焼失せずに存続していれば、日本の教育は変わっていたかもしれない。インクルーシブ教育がもう少し世に広まっていたかもしれない。

そう思うと、トモエ学園がなくなってしまったのはすごく残念なことだ。

トモエ学園のように、先生1人につき生徒10人くらいの割合で、生徒各自のペースに合わせて勉強をしたほうがよっぽど安上がりだし、
生徒の理解度も高まると思う。

でも、学校には集団を統制する目的がある以上、一方的に説明する形式の授業をやりたがる先生もいるんだろうな、残念ながら。

 

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