(読書感想)待機児童対策・その2(同意できる点)

(読書感想)待機児童対策・その1(同意できない点)の続き。

書籍「待機児童対策」(編者:八田達夫、日本評論社、2019年)について、前回の記事ではこの本「待機児童対策」に批判的な見解を載せた。

その反面、この本「待機児童対策」に書かれた編者の見解について同意する点もある。

今回の記事では、この本「待機児童対策」で編者の見解に賛成する点を取り上げる。

 

編者の見解に同意する点(1)待機児童の原因

保育園が法律上「児童福祉施設」であるのに、待機児童対策は実際は労働施策であるため、待機児童の問題が解消されないという編者の指摘はその通りだと思う。

つまり、保育園は①救貧政策のためのものであると同時に、②女性の労働参画の促進のためでもある。この2つが同時に求められているからこそ、待機児童問題が解消されないという編者の指摘に同意する。

①救貧政策だからこそ、認可保育所の選考で同指数の場合、低所得の世帯が優先して入所できる。

一方で、高所得の世帯がお金をたくさん払えば高品質のセレブ無認可保育所に入所できるのかというと、現状、そういうセレブ無認可保育所はほとんど存在しない。だから待機児童問題が解消しないのだろう。

 

編者の見解に同意する点(2)「0歳児保育について」

保育所で0歳児保育をするのは大きなコスト(お金)がかかるという事実がある。

なぜなら、認可保育所では0歳児3人に1人の保育士を配置しなければならないからだ。

 

一方で、1歳児は6人に1人の保育士の配置である(国基準)。

現状、子どもが2歳まで育児休業が取れるようになって育児休業制度が徐々に定着してきた。

それにも関わらず、1歳児での認可保育所入所ができない場合をおそれて0歳児から認可保育所に預けようとする世帯が多いと編者は指摘する。私が住む地域でも同様だ。

1歳児で確実に認可保育所に入所できるようにすれば、コストが高い0歳児保育にかかる費用を1歳児の保育に回すことができ、より多くの子どもが1歳児で認可保育所に入所できる、と編者は本書で述べている。

この点については全面的に同意する。我が家の次男も1歳児が認可保育所に入所できなかった経緯がある。

0歳児保育を止めてその分を1歳児保育に回してくれるなら、認可保育所で預かる0歳児の「倍」の数の1歳児が認可保育所に入所できる

 

それだけでない。

0歳児は体力がないので保育所でかぜをもらってきても治りにくいし、出産から1年経たずに仕事復帰するのは母体にも負担が大きい。

そして、子どもの病気で頻繁に仕事を休む同僚を抱えると、職場のフォローも大変だ。

 

0歳児は家庭保育して、1歳児か2歳児になってから仕事復帰するほうがメリットは大きい。

もちろん、どうしても0歳児で復帰せざるを得ない状況の人もいるだろう。

けれども、育児休業制度が整っている企業に勤めていて1歳児までは問題なく育児休業がとれるならば、1歳児から確実に保育所に入所できるような施策を自治体がとってくれるほうが、親・子ども・職場にも良いことのほうが多いと個人的には思う。

 

保育ママとベビーシッター

この本「待機児童対策」では、コスト高である0歳児保育のコスト低減を図るために保育ママ&ベビーシッターの活用が挙げられている。

個人的には、保育ママやベビーシッターはどうしても利用を躊躇する。

なぜなら、ひとりの保育者の目しか行き届かないからだ。

それに、保育ママもべビーシッターも、無資格でもなれるところが正直、ちょっと不安だ。

 

この本には江戸川区の職員との対談が掲載されている。

その対談の中で、江戸川区の保育ママ制度についての詳しい説明がある。

私は保育ママという制度について良く知らなかったので、江戸川区職員との対談の話は有用だった。

江戸川区の保育ママは、保育士の資格がなくても研修を受ければ保育ママになれるそうである。

 

一方で、家庭で子どもを預かる家庭福祉員という制度がある自治体もある。

家庭福祉員は資格者に限られるのに対して、江戸川区の保育ママは資格は必須ではない点が違うそうだ。

本書には江戸川区の保育ママの報酬の話も載っている。

江戸川区の保育ママは営利目的というよりも社会貢献のような制度で運営されているそうである。

 

まとめ

(読書感想)待機児童対策・その1(同意できない点)

(読書感想)待機児童対策・その2(同意できる点)

(読書感想)待機児童対策・その3(公立認可保育所は特養みたいな位置づけになるのか)

(読書感想)待機児童対策・その4(認可保育所が利用者を選べるほうがよいか)

(読書感想)待機児童対策・その5(企業主導型保育所)