(読書感想)教育格差(松岡亮二著・ちくま新書)
教育格差(松岡亮二著・ちくま新書・初版2019年)を読んだ。
結論は予想通り。「親の経歴(大卒・非大卒か)で子が受ける教育が変わる」である。
一度は目を通してみてほしい本だ。
教育格差(松岡亮二著・ちくま新書・初版2019年)
この本には、たとえば「親が大卒か非大卒かで習い事や塾の通塾割合が変わるのか」など、幼児教育・小学校・中学校・高等学校での教育格差を示唆する膨大なデータが収録されている。
どれかひとつ、印象的なものを選ぶのが難しいくらい、たくさんの調査結果がこの本に掲載されている。
印象に残った箇所を挙げる。
東京都区部:両親とも大卒者の子どもの43%が私立中学に通う
東京都区部の中学受験熱は主に、両親大卒者家庭によるものである。
東京都区部に限定すると、両親ともに大卒者である子の43%が私立中学に通っている(178ページ、両親ともに非大卒の子で私立中学に通うのは11%)とのこと。
東京都区部で両親ともに大卒者の子で公立中学に通っているのは約半分(53%)にすぎない(両親ともに非大卒の子が公立中学に通う割合は88%)。
地方では大卒女性の職がない
地方では若い大卒女性の職がない。
「若い人ほど大卒の割合が高くなるが、地方在住の女性に関してだけ大卒の割合が20代と40代とでほぼ変わらない」という結果がこの本に示されている。
言い換えれば、「若い女性は大学に行かなくても就ける職がある」・「地方には、看護や介護など大卒でなくても若い女性が長く働ける仕事が多い」ともいえる。
この本では、大学に行くこと=希望を叶えること、という前提があるようだが、必ずしもそうでないケースも多々あると思う。地方では大学卒業よりも例えば看護師(大卒でなくとも資格取得は可能)の資格のほうが価値があるのだろう。
保育園を選ぶ大卒親は増えているはず
著者は「大卒の親は保育園でなく幼稚園を選ぶ傾向があること」という。
ただ昨今は、両親ともに大卒者の世帯が保育園を選ぶ割合が高くなっていると思う。0~2歳という早い段階から保育園に通う子の割合が増えている。
結果として、ごく一部の名門幼稚園を除いて、都内のほとんどの幼稚園で定員割れが起きている。
早いうちから保育所に入所することによるこどもへの影響に関する調査結果が待たれる。
まとめ
著者は『日本は生まれによって機会と結果に格差がある「緩やかな身分社会」』だと述べる。
著者もこの本で述べているが、格差を拡げないためには「入学試験で筆記試験のみの選抜を無くしてはならない」と改めて思う。
試験一発勝負は人生一発逆転の可能性があることを忘れてはなるまい。
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