カネヤン死す
元プロ野球選手で400勝投手の金田正一(以下、登場人物は敬称略)が2019年10月6日亡くなった。
享年86歳。
今の20代・30代の人は金田正一のことを知らない人も多いだろう。
私も金田正一が現役だった頃は知らない。
ただ、私は、金田正一がロッテの監督をしていた頃のことをかすかに覚えている。
私の記憶にはっきり残っているのは野球解説者としての金田正一だ。
現役引退した後しか知らなくても、野球解説の内容からして金田正一は相当インパクトがある人なのは間違いない。
こんなに「濃い」人は珍しい。
だから、金田正一が亡くなったと聞くと、身内でないのにすごく残念なのだ。
金田正一は「天皇」と呼ばれていたそうだ。
基本「超」ワガママな人だろうから、金田正一の周りにいた人はきっと大変だったと思う。
けれども、どこか憎めないところがあるのが不思議だ。
巨人びいきの野球解説
もう40年ほど前になるのだろうか、金田正一は巨人戦の野球解説をよく担当していた。
金田正一の野球解説はとにかく言いたい放題・巨人びいきだった。
今だったら苦情の電話・メールが殺到し、SNSが炎上するような解説内容だった。
分析というよりも自分の願望(今日の試合は〇〇選手が勝利投手になってほしいとか)を解説していることも多々あった。
でも、野球解説で言いたい放題言っていても、金田正一はなんだか憎めないところがあった。
アンチ巨人ファンは金田正一の解説を嫌がっている人も多かった。
「金田が野球解説の日はテレビの音を消して観る」なんてよく言われていた。
けれども、なんだかんだ言って金田正一の解説を楽しんでいた人も多いと思う。
在りし日の金田正一の野球解説をぜひ放送してほしい。
日本テレビさん、お願いします!
吉田豪のカネヤン伝説
金田正一のことを吉田豪経由で知っている人も多いのではないだろうか?
吉田豪と愛甲猛 江夏豊・金田正一・落合博満を語る
ネットが発達していない時代のプロ野球選手というのはかなり自由だったことがわかる。
ノーベル賞受賞者に変人が多いことはよく知られた話だ。
同じように金田正一に限らず、超一流のプロ野球選手にも「変人」が多い。
どの業界でも突き抜けていないと抜きん出た存在にはなれないということだ。
ロッテの元プロ野球選手・愛甲猛の著書「球界の野良犬」には、金田正一だけでなく、江夏豊・張本勲・落合博満のぶっ飛んだエピソードが満載されている。とても面白い本だ。
私が好きなのは、愛甲が監督だった金田正一に呼ばれ、当然野球の話だと思い監督室に行ったところ、金田正一が財布を取り出して万札の束を愛甲に見せつけ「野球選手というのは常に大金を財布に入れておかねばならん」と話したというエピソードだ(笑)
当時のプロ野球選手は喫煙・麻雀は当たり前だったようだ。
そんな中で、金田正一は、食べ物に気を遣ったりと体のコンディション維持に相当神経を遣っていた、当時としては珍しい選手だったようだ。
そういう意味で、金田正一は大胆かつ繊細で、先見の明がある直観型の人間だったのだろう。
週刊誌での美女対談
金田正一は野球解説を退いた後も、男性週刊誌での美女対談を長く続けていた。
対談相手の美女は、女優などの有名人である。
吉田豪が言うように、金田正一は対談相手の美女に対してセクハラまがいの発言をよくしていた。
他の人が言ったら許されないようなことを金田正一は平気で質問していた。
けれども何もおとがめなしだ。
金田正一はなぜか憎まれないキャラクターなのである。
男性週刊誌に掲載されていた金田正一と美女との対談についても、あたらめて読んでみたいものだが、対談相手から了解が得られないのだろうか。
もうCMが見られないかと思うと寂しい
そんなカネヤン、テレビでもあまり見かけなくなった。
「金田正一は何を言うか予測できないから、怖くて生放送に出せない」という理由もあったのだろう。
最近は、土曜朝の日本テレビ系列の「ぶらり途中下車の旅」という番組で流れる全日警(警備会社)のコマーシャルで金田正一を見かけるだけだった。
このCMで、金田正一は野球少年のおじいちゃん役で出演していた。
少年野球の試合を終えた孫が帰宅して試合に勝ったことを告げられた金田正一が「よっしゃ!」と答えるという内容である。そして最後に「ホームセキュリティは全日警」という金田正一のナレーションが流れる。
よく考えれば、少年野球の試合に勝つこととホームセキュリティとの関連性がいまいち分からないのだが(笑)、もうこのCMでカネヤンを見ることができないと思うと寂しい。
【2019.10.19追記】
2019年10月19日現在、全日警のカネヤンのコマーシャルはまだ放映されている(金田正一さんのご冥福をお祈り申し上げますというテロップが出た状態で)。
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