(読書感想)体験格差(著者:今井悠介)
体験格差(著者:今井悠介)を読んだ。
著者の今井悠介氏は長年、生活困窮家庭の支援を続けてきた人だ。
この本には、体験格差の事例(ケース)が対談形式でいくつも挙げられている。
現状、生活困窮家庭の子どもの体験は不十分であるとのこと。
最近はネットでさかんに「体験格差」が取り上げられている。
「体験」を売りにした、体験ビジネス(それなりのお値段の体験学習)もよく目にする。
この本の著者もその手の業者と思いきや、この本を読む限りはそんなことはない(ようだ)。
この本で体験格差の事例として取り上げられたのは、シングルマザー・外国人・多子世帯・不登校や発達障害の子どもの保護者で、これらの複数に該当する保護者も少なくない。既存の学校教育ではサポートし切れていないケースがほとんどだ。
少年スポーツ団や習い事では送迎やお手伝いが求められるため、仕事が忙しい生活困窮家庭の保護者は習い事やスポーツなどをさせてあげられないと証言する。
地域の町内会が行うイベントも同様で、参加の見返りとして当番やお手伝いへの参加を求められることが多いので、参加を躊躇するという。
金銭的に困窮する保護者は、少年スポーツ団や習い事、町内会のなど既存の仕組みに参加することが難しいのだ。
他方、少年スポーツ団や町内会という組織や行政とは別に、半ば持ち出しで、割安でさまざまな体験ができる教室を開いている人が全国にいると著者は本書で述べる。
このような私的な教室ではさまざまな体験のほか、生活困窮家庭の保護者の話を聞いたりすることもあるという。
現状は、体験格差の解消は、このようなこのような志がある人に頼るしかないのだろう。
学校教育が崩壊しつつある今、内田樹氏が言うような「私塾」が学びたい人々を支えるしか方策はない、とこの本を読んで感じた。
ただ、ふと思った。
タイトルを見てこの本を手にするのはどんな人たちなのだろう。
この本は、我が子にいろいろな体験をさせてあげたいと思う人に有益な情報をあたえてくれる本ではない。教育とか福祉の分野の人が読む本であろう。
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